瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

赤いマント(125)

・廣井脩の「口裂け女」(2)
 それでは、廣井氏の赤マントに関する記述を確認して置きましょう。
 NHKブックス18頁10〜13行め、

 もうひとつは、昭和五四年頃、小中学生のあいだに拡がった「口裂け女」のうわさである。
 昭和一四年から一五年にかけて、赤マントを着た怪人が少女を襲い、その生き血を吸うというう/わさが全国的規模で拡がったことがあり、怖くて便所に行けない子供が続出したという(注一二)。/この口裂け女のうわさも、同じように子供たちに強い恐怖を引き起こしたのである。


 「もうひとつは」と書き出されているのは、この前の節「恐怖・不安とうわさ」が、16頁10行め「うわさを生み出す‥‥要素は、人々の感情である。」と書出して簡単に説明、そして17頁3行め「次に、人々の感情的要素を反映したうわさの例をふたつあげてみたい。」として4〜5行め「明治初期に拡がったうわさで、人々の恐怖や不安を反映して拡がったと考えられる」例を2つ挙げていたからです。
 この2つの例は文春新書では21〜72頁、第1章「流言とは何か」の37頁11行め〜50頁9行め「3 流言の心理学」の節、44頁8行め〜47頁15行め「明治時代の恐怖流言」として3つ挙げた中に、45頁2〜15行め「婦女徴募の流説」と46頁2〜11行め「コレラ騒ぎ」として取り上げられています。
 NHKブックスに戻って、18頁12行めの(注一二)は章末の36頁6行め〜37頁16行め「―――注」に「二〇」項挙がるうち、37頁6行めに、

  一二、「毎日新聞」昭和四八年一二月二三日朝刊。

とあります。この廣井氏の依拠資料は、文春新書では省かれています。「毎日新聞」の記事も見たのですが、これについては追って別に取り上げましょう。
 文春新書118頁2〜8行め、

 本書の冒頭で触れた「外国人労働者暴行流言」は、典型的な浸透流言だが、このタイプの流/言を語るとき、昭和五四年頃、小中学生のあいだに広がり、かれらを恐怖と好奇心の渦に巻き/込んだ口裂け女に触れないわけにはいかないだろう。
 昭和一四年から一五年にかけて、赤マントを着た怪人が少女を襲い、その生き血を吸うといううわさが全国的規模で広がったことがあり、怖くて便所に行けない子供が続出したというが、/この口裂け女のうわさも、同じように、四〇年後の子供たちに強い恐怖を引き起こしたのである。


 一読、NHKブックスを下敷きにしていることが分かります。太字にしたところが一致する部分です。
 「冒頭」云々は文春新書5〜19頁「はじめに――最近の流言」に13頁13行め〜19頁(14行め)「2 阪神・淡路大震災後の「自身再来流言」」とともに取り上げられている、6〜13頁12行め「1 外国人労働者暴行流言」で、NHKブックス刊行後の事例です。
 続く「口裂け女」に関する説明や、この2冊の全体的な問題は、機会があれば改めて取り上げることにします。
 廣井氏には別に「赤マント」に触れた文章があって、それは少し違う書き方をしているので、次回はそれを見て置くことにしましょう。(以下続稿)