瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『軍師の境遇』(1)

・角川文庫6796(1)
・昭和六十二年七月二十五日初版発行(285頁)
・昭和六十二年八月三十日再版発行 定価379円
・平成二年六月二十日十二版発行 定価485円
 カバーは本体とはそれぞれ時差があるので、その考証のためまずカバー裏表紙折返しから見て置く。左下に小さく「カバー 暁印刷」右下にKBマークは一致。注目すべきは上部の目録「角川文庫松本清張作品集」である。再版・十二版ともに2013年3月7日付「松本清張『内海の輪』(1)」に紹介した角川文庫3251『内海の輪』二十三版の定価380円のカバーにあった37点45冊と同じ形式で、再版のカバーはこれに「野盗伝奇」が追加されて38点46冊になっている。再版は初版の1ヶ月後だから当初は初版と同じカバーが掛かっていたはずで、そこでは当然「軍師の境遇」が最後の35点41冊になっていたはずであるのに「乱灯江戸影絵(上)(中)(下)/失踪の果て 野盗伝奇」の3点5冊が追加されたものに掛け替えられているのである。これは2013年5月30日付「松本清張『野盗伝奇』(2)」で取り上げた角川文庫7259『野盗伝奇』初版にあるものに同じだが、そうすると『野盗伝奇』が「昭和六十三年十二月十日初版発行」で、その次の角川文庫7207『紅い白描』が「平成元年十二月十日初版発行」だから、その間1年、さらに定価が消費税に対応したものであることから、恐らく平成元年(1989)4月の消費税導入に伴って掛け替えたものと推定される。
 十二版はさらに5点「/紅い白描 信玄戦旗/黒い空 数の風景/犯罪の回送」が追加されて43点51冊になっている。これも最後に挙がっている角川文庫9136『犯罪の回送』が2013年7月25日付「松本清張『犯罪の回送』(1)」で見たように「平成五年十月十日初版発行」だから、増刷から3年以上経過して後に掛け替えられたものということになる。さらにその次は2013年5月20日付「松本清張『一九五二年日航機「撃墜」事件』(1)」で見たように「平成六年十二月二十五日初版発行」の角川文庫9195『一九五二年日航機「撃墜」事件』で、この1年余がこのカバーが掛けられた期間の目安になる。
 すなわち、私の見た再版と十二版のカバーは、本体が昭和62年(1987)8月から平成2年(1990)6月の3年弱の間隔を空けているのに対し、カバーの方の時差は、広く取って上限は平成元年(1989)4月で下限は平成6年(1994)12月の5年半、短く設定すると平成元年(1989)12月から平成5年(1993)10月の4年弱ということになる。カバーと本体が一致しないので、うっかりカバーのついて、奥付の発行日に従ってしまうととんだ間違いになる。こんなところまで一応確認しなければならない次第である。
 カバー表紙はほぼ同じだが、著者名が再版のカバーでは黒く縁取りした黄色のゴシック体だったのが、十二版のカバーでは青緑色になっている。
 カバー背表紙は赤地に白抜きで「ま|1-31 軍師の境遇」標題は秀英初号明朝。中央やや下に同じ活字で一回り小さく著者名、再版はこの下に半角分空けて黒のゴシック体で小さく「緑/227-43」番号は横並び。下部にやはり白抜きのゴシック体で「角川文庫」すぐ下に黒で●に赤で「P」すぐ下に再版「390」十二版「500」。(以下続稿)