実家にいた時分、父が「コメディお江戸でござる」を好んで見ていた。馬鹿馬鹿しい笑いで息抜きしたかったらしい。だから夕食後にお茶を飲みながら、毎週杉浦氏の着物姿を眺めていた。
別に愛読していた訳でもないのに手にしたのは、ある図書館で何故かこの文庫本が2冊並んでいて、ふとそんなことを思い出したからだった。1冊は杉浦氏生前の初刷、もう1冊は没後である。
・新潮文庫4272(1)
- 作者: 杉浦日向子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1989/04/28
- メディア: 文庫
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・平成十八年七月十五日二十四刷 定価781円
二十四刷の奥付には初刷と二十四刷の発行日が並んでいる。
本体は目録と奥付以外は一致。用紙は扉から奥付まで光沢のないアート紙。
1頁(頁付なし)扉、3頁(頁付なし)中扉で縦組み明朝体で標題*1、5頁(頁付なし)は中央やや上に丸ゴシック体で
この本は/江戸の町が/私達の町の/すぐ隣に/有る気で/歩き/或る記に/したものです。
ヒナコ
とある。標題が「アルキ」となっている所以である。
6頁から偶数頁には頁付があって、下部中央に横長の灰色◆にゴシック体半角の白抜きで入る。奇数頁(頁付なし)は中央にカラーイラスト(7.8×7.7cm)があってその下右に灰色の太いゴシック体で西暦年が入る。6〜7頁の見開きだと、偶数頁(6頁)は上部中央にゴシック体で大きく「文政十一年/七月二十八日<晴れ>/日本橋*2」とあって、この年号と地名に振仮名があるのは以下全て同じ。その下に丸ゴシック体で杉浦氏の江戸レポートが綴られる。6頁は16行、最大18行、1行26字。7頁イラストの下右には「1828.7.28」とある。以前、2010年12月31日付「年齢と数字」で西暦と年号の扱いについて書いたことがありますが、これはちょっといけないのではないでしょうか。読者は単純に、1828年7月28日を、今の7月として想像するでしょう。しかし「文政十一年」としてあれば「七月二十八日」は陰暦七月なので、西暦では1828年9月7日です。まだ残暑の厳しい折でしょうから、そんなに差はないかも知れませんが……そうすると、天候なども当時の日記などで調べたのではなくて、杉浦氏のフィーリングで決めたものなのでしょう。照合するなんてことは、しないで置きましょう。
最後は258〜259頁の見開きです。そうすると全127回分ある訳です。目次はありません。杉浦氏と同じく本書の中を「アルキ」回れば宜しいのです。
259頁(頁付なし)の裏は中央に小さく明朝体縦組みで「この作品は『サンデー毎日』昭和六十年七月二十八日号より/昭和六十三年一月三十一日号まで連載されたものです。」とあります。おや、と思って、258頁を見ると上部にゴシック体で「天保八年/一月三十一日<雨>/駒形町*3」とあります。月の運行に従った当時の暦に「31日」があるはずがないので、この日付というのは全て掲載誌の発行日なのでした。ここまで分かればもう、別段目くじらを立てる要もないでしょう。杉浦氏のファンタジーに浸れば宜しいのです。
「四」項目の「文字づかいについて」があって、その裏から目録が10頁です。最後の3頁が「新潮文庫最新刊」。この初刷が初めて杉浦氏の著作が新潮文庫に収録されたものらしく、二十四刷では1頁めの5点めまでが「杉浦日向子著」です(4点め「杉浦日向子と/ソ 連 編 著」。本書はない)が、初刷では9頁めの5点めに本書が挙がるのみです。初刷の1〜2頁めは女性のエッセイ集が集めてあって、3頁め「池波正太郎著」6点で初刷と二十四刷とは4点が一致。4頁めの1〜2点め、二十四刷は池波正太郎の関連本、3〜6点め、初刷は「白石一郎著」でしたが二十四刷は「宮部みゆき著」になっています。5頁め「山本周五郎著」6点は一致。6頁め、初刷3〜6点め「宮尾登美子著」3点と対談1点でしたが、二十四刷は1〜4点めが「宮尾登美子著」で1点追加され、対談はありません。(以下続稿)
【追記】以上は1月末に初刷と二十四刷を比較して見たので、文体が途中の突っ込み辺りから敬体になっているのは、書いているうちにそういう気分になったからで、他意はありません。その後、二十五刷を見た。
・平成十九年五月十五日二十五刷 定価781円
今回取り上げた範囲での異同は目録で、10頁あるのは同じだが「杉浦日向子著」は1頁めの1〜3点めと1頁め5点め〜2頁め1点め、1頁め4点めは上記、2頁め2点めは「杉浦日向子監修 お江戸でござる」。2頁めの残りは「北村鮭彦著」2点に「山本博文著」2点、3頁めは「池波正太郎著」6点及び、4頁めは二十四刷に同じでしょうか。5頁め「山本周五郎著」6点、次の6頁めも同じでしょうか、5〜6点めは「藤沢周平著」、7頁めは「林真理子著」5点に6点め、森まゆみ著「鴎外の坂/芸術選奨新人賞受賞」。