瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

夏目漱石『それから』の文庫本(8)

新潮文庫44(2)
 昨日の続き。
 ③八十二刷(昭和六十一年一月三十日)はそれより前の刷とも後の刷ともカバーが異なるので、偶々手許にある、同じ版のかなり後の刷である③百二十六刷と比較しつつメモして置く。
 カバー背表紙、紫地に白抜き明朝体で上部に標題「そ れ か ら」、中央やや下に著者名、下部に白く抜いてその中に黒のゴシック体で[な 1 5]と、ここまでは③百二十六刷と一致。地色が違うがこれは褪色のためか。その下に白枠の長方形に横組みで「新潮/文庫」とあってその下に整理番号が入っているはずであるが分類票貼付のため読めない。③百二十六刷はゴシック体白抜き「新潮文庫」。最下部に黒のゴシック体で「280」、③百二十六刷は最下部を黒くしてゴシック体白抜きで「\400」とある。
 カバー裏表紙、説明文の上下に横線、説明文は③百二十六刷に一致。下の線(中央)のすぐ下に1行で「ISBN4-10-101005-6 C0193 \280E 定価280円」その下、中央に葡萄マーク。
 カバー表紙折返しの広告と、カバー裏表紙折返しは2012年3月11日付「夏目漱石『硝子戸の中』の文庫本(1)」で見た新潮文庫373『硝子戸の中』五十七刷に同じ。
 カバー表紙折返し、右下に明朝体縦組み「カバー写真 東映 提供」。発行日からも察せられるように、これは2012年8月19日付「夏目漱石『それから』の文庫本(3)」で見た角川文庫321『それから』改版三十四版(昭和六十年十一月二十日発行)のカバーと同じく、昭和60年(1985)11月9日公開の森田芳光監督『それから』映画化に連動したもので、或いは③七十九刷改版(昭和六十年九月十五日)自体が映画化を当て込んでの改版であり、改版当初からこのカバーが掛かっていたのかも知れない。
 角川文庫とは別の写真が使用されており、パンフレット類とも異なっている。ネット上でこの新潮文庫版の書影が閲覧出来るのは田中純(1960.2.27生)のブログ「Blog (Before- & Afterimages)」の2004年12月24日付「「それから」」の写真のみであるようだ。大体のレイアウトは田中氏が掲載している写真で分かるが、補足をして置くと左上に黒枠にクリーム色地の短冊型(5.7×1.7cm)に赤で「それから」とあり「」の左に右が上に横転した黒で「sorekara 」とあり、その右に黒く縁取った白の縦組み明朝体で著者名、右下に黒の明朝体で「新 潮 文 庫」とある。
 そこでふと思ったのだが、3月1日付「夏目漱石『こゝろ』の文庫本(11)」に取り上げた角川文庫235『こゝろ』百七十七版・一八八版のわたせせいぞうのカバーは、どう見ても『こゝろ』の一場面ではなく『それから』の、まさにこの新潮文庫のカバーの場面を描いたものではないか、ということである。
 本体は「文字づかいについて」まで②百二十六刷に一致。
 その裏が奥付で目録はない。奥付の異同はそれぞれの発行日、発行者が現社長の父から現社長へ、郵便番号が3桁から7桁に、「電話〈業務部/編集部〉」の順で9桁だったのが「電話〈編集部/読者係〉」で10桁、市外局番(〇三)の次が「二六六―」から「三二六六―」になり、下4桁は業務部と読者係が同じ、編集部は勿論そのまま。その次に「振 替 東 京 四 ― 八 〇 八 番」とあったがHPアドレスになり、「乱丁・落丁本」が「小社通信係宛ご送付/」から「小社読者係宛ご送付/」に変わっている。下部の横組みのところは「印刷」の前に○に「二」の字がある以外は③126刷に同じ。(以下続稿)

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 実はこのカバーの新潮文庫については、角川文庫よりも先に気付いていたのだが、なかなか借り出して落ち着いてメモを作る余裕がなかった。というか、一度借り出して返却直前にメモを作成したのだが、不注意(ではないつもりなのだが)から消してしまったこともあった。