瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

夏目漱石『三四郎』の文庫本(4)

・角川文庫271(3)
 角川文庫271については、2012年3月20日付(1)に、栃折久美子のカバーで本体が282頁の九十八版(定価260円)と、わたせせいぞうのカバーで本体が337頁の百二十版(定価340円)とを比較したのが手始めだった。
 その後、前者に同じ九十六版(定価260円)と、後者に同じ百二十五版(定価340円)一三四版(定価362円)を見た。百二十五版と一三四版については2013年3月8日付(2)に細かい異同を挙げて置いた。
 わたせ氏のカバーに掛け替えると同時に、奥付に反映されない改版が行われたものと見られるが、わたせ氏のカバーになっている百八版(337頁)を見た。
百八版】昭和二十六年十月二十日初版発行・平成元年三月十日百八版発行・定価340円
 カバー背表紙は幅が広くなっているが九十六版・九十八版と同じだが最下部が「  ―7340」となっている。
 カバー背表紙も九十六版・九十八版に同じく白地に上部に1行、ISBNコードとCコードに「 \340E 定価340円」とある。消費税導入の3週間前の増刷当時のカバーであることが分かる。
 カバー裏表紙折返しは百二十版に同じ。
 カバー表紙折返しは下部に2013年3月5日付「角川文庫の「野性時代」の広告(1)」の③、最下部右寄せで「カバー わたせせいぞう」、上部に横組みで、まずゴシック体で左寄せで「三四郎」、半行分空けて明朝体9行で紹介文、1行16字。これは九十六版・九十八版に1行17字で入っていたものを書き換えたもので、文字も一回り大きくなっている。

 「それから「門*1と続く*2部作の\序|/曲ともいうべき作品。いわゆ\る「無/意|識の偽善」という問題を\めぐ*3愛/そう*4として愛を得ず、\愛されよう*5と/して愛|を得ない複\雑な愛の心理を描/く。*6三四郎を\中心に展開される当時/の東|京大\学学生生活の描写は、風俗/史的\に|も貴重な資料を提供する*7ろ/\う。|明治四十一*8年作。


 改行箇所は「/」で示した。九十六版・九十八版の改行箇所は「|」で示し、異同は灰色の太字にして注記した。これは百二十版・百二十五版の裏表紙中央のゴシック体縦書き10行(1行14字)の紹介文と同文である。百二十版・百二十五版の改行箇所は「\」で示した。冒頭1字下げでなく、鍵括弧は全て半角である。
 本体は百二十版と同じらしい。奥付のレイアウトは今手許にある九十六版に同じ。異同は初版発行の日付の次の行が「平成 元 年三月 十 日 百八版発行」となっていること、電話の市外局番(〇三)の次が九十六版は「二三八」だったのが「八一七」に、九十六版「製本所――多摩文庫」が「製本所――大谷製本」に変わっていること。
 裏の角川源義「角川文庫発刊に際して」の双郭は九十六版は10.8×7.2cmだったのが11.2×7.4cmと大きくなっている。
 目録は3段組(1段21点)の「角川文庫目録 現代日本文学(緑帯)」だが、ヘッダの年月が入っていたところが空白になっている。頁付は(2)〜(11)頁。(2)頁上段の11点めまでが「夏目漱石」著で、九十六版カバー裏表紙にある11点に同じ。なお九十六版の「角川文庫目録 現代日本文学(緑帯)1984年7月」の(2)頁上段の10点めまでが「夏目漱石」著で、『明暗』がない。なお「夏目漱石」著の次に「漱石の思い出 〈夏目鏡子/松岡譲筆録〉」があるのは同じ。ちなみに「松本清張」は(4)頁上段11点めから下段1点めまでの33点で最後は『軍師の境遇』。
 最後に1頁10点の「角川文庫 最新刊」の(49)頁(50)頁で九十六版の最後にあるものと同じレイアウトだが、それぞれの本の最下部にある「420円」などの定価表示が削除されている。消費税導入に伴う価格改定に備えて、削除(もしくは空白に)したものであろう。

*1:九十六版・九十八版の鍵括弧閉じは全角。

*2:九十六版・九十八版は「3」。

*3:九十六版・九十八版は「って」。

*4:九十六版・九十八版は「せ|ん」。

*5:九十六版・九十八版は「ん」

*6:九十六版・九十八版はここに「さら|に」とある。

*7:九十六版・九十八版は「ものであ」。

*8:九十六版・九十八版は「41」。