瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

鉄道人身事故の怪異(6)

 一昨日からの続きで、今回からしばらく、小池氏の「追ってくる屍体」について、『日本の幽霊事件』143頁に「その当時のことだが、私は東京の西武新宿線にある野方という駅に近い踏切で、この伝説のもとになったような出来事が起きたという話を本に書いたことがある」というのが、すなわち144頁に云う「かつて『東京近郊怪奇スポット』という本に書いた」ことになる訳ですが、その、内容について、検討して見ることとしましょう。
 小池壮彦『東京近郊怪奇スポット』64〜65頁「〈救急車で運ばれた女の身体の生きた半分〉」は、この見出しの下に「中野区野方・踏切 〔準名所〕」とあります。
 ちなみに、この本がどのような本であるかは、2013年2月26日付「小池壮彦『東京近郊怪奇スポット』(1)」及び2013年2月27日付「小池壮彦『東京近郊怪奇スポット』(2)」に見て置きました。それから、 2013年3月1日付「小池壮彦『怪談 FINAL EDITION』(2)」に46〜47頁について、2013年3月2日付「小池壮彦『怪談 FINAL EDITION』(3)」及び2013年3月3日付「小池壮彦『怪談 FINAL EDITION』(4)」に53〜54頁(及び51〜52頁)について検討したこともあります。
 まずは、最初の段落を抜いて置きましょう。64頁3〜6行め、

 様々なヴァリエーションを持つ都市伝説に、上半身だけで追ってくる女の話というのがある。最初/にあれを聞いたのがいつだったかはもう忘れたが、十数年以上は前のことだろう。むろん実話として/聞いたのだったが、正確にいえば、そういう事故があった、という形で聞いたのであって、怪談とし/て聞いたのではなかった。


 ここでもやはり怪談扱いにはしていないので、65頁にある〔怪奇現象発生の頻度〕〔深夜の現場の恐怖度〕はともに最低評価の☆(星1つ)です。
 続く64頁7〜11行めと14〜15行めに事故の内容が説明されますが、もちろん、要約である『日本の幽霊事件』よりは、詳しいものとなっています。
 この段階での小池氏は、相当異常な現象であることを認めつつも、有り得ないことではない、という立場で「事実」談の可能性を強調していました。ところがその後、野方の踏切以外にも類例が多々存することを知ったことにより、『日本の幽霊事件』の要約では『東京近郊怪奇スポット』よりは随分冷めてしまっているように、感じられるのです。――ある場所に固有で唯一だと思っていた話が、実はどこにでもあってそのどれもが実際にそんなことがあった場所ではなかった、というのが傳説なのですけれども。……いえ、まずそんなことは実際には「ない」のですけれども。(以下続稿)