瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

中島京子『小さいおうち』(35)

Wikipediaの説明について(3)
 一昨日からの続きで「登場人物」の節の、残り3人について。平井の説明と重なるところがあるためか、玩具会社の社長は取り上げられていない。

健史(たけし)
タキの大甥(妹の孫、甥の次男)。力仕事などタキにはできない生活のサポートをする。タキのノートを盗み読み、戦中とは思えない平井家の明るい様子が、教科書で習った戦時の情勢と余りにも違うため、タキのノートは嘘ばかりだと断じる。


 レビューを読んで見ると、この健史について、健史を登場させることで、戦前という時代に対する現代人の誤解が明瞭になってくる、と肯定する意見が多い。その意味で確かに、作者の狙いは奏効していると云える訳だ。
 それからまた戦前に戻って、最後に板倉 正治松岡 睦子という、平井時子に対して特別な感情を抱いていた2人が取り上げられている。このうち前者については次回詳しく検討することにしたい。
 現代の人物としては健史がただ1人取り上げられているだけだが、他にも健史の父・智や、父の従兄・軍治おじさん夫婦、或いは元彼女などは取り上げても良かったかも知れない。尤も、ここで解説されている人物と内容は、全てタキのノートに基づくもので、健史による追跡内容は含まれていないから、ノートに少し言及されるのみの元彼女や軍治まで取り上げるとすれば、第七章までのタキのノートと、没後の最終章とを「あらすじ」でも明確に分け、「登場人物」ではどちらに所属するのか、はっきりと示して置くべきであろう。(以下続稿)