瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

川端康成『古都』(2)

 7月30日付(1)の続き。
新潮文庫1833(2)
 カバー裏表紙の紹介文、②と③で組み直されているが同文。但し、5〜8行め、

‥‥。互いにひかれあい、懐か/しみあいながらも永すぎた環境の違/いから一緒には暮すことができない/……。‥‥

というのは違うのではないか。確かに最後の「冬の花」の章、②238頁1〜2行め・③261頁14行め〜262頁1行め、

「苗子さん、うちにずっと、いとくれやすこと、でけへんの。父も母も、そない言う\てるし|……。千重子はひとりで、さびしいし……。杉の山が、どない気楽かしれんけ\ど。」*1

と千重子に言われて、苗子は、②238頁5〜6行め・③262頁4〜5行め、

「お嬢さん、今では、生活もちごうてますやろ。教養みたいなんもちごうてますやろ。\室町|のくらしなんか、あたしには、でけやしまへん。‥‥*2

と断っているのであるが、これは決定的な理由ではない。飽くまでも、②238頁17行め〜239頁1行め・③262頁16行め〜263頁1行め、

「‥‥、前にも言いましたやろ。苗子は、お嬢さんの、おしあわ\せに、|ちょっとでもさわりとうないのどす。」‥‥

というのが根本的な理由で、生活環境の違いというのはこれに附加した条件に過ぎない。
 本体、②は1頁17行、1行41字、改行位置は「|」で示した。③は1頁16行、1行38字、改行位置は「\」で示した。細目については単行本と比較しつつ別記する。
 ②八十六刷・九十二刷・九十六刷は目録まで一致。奥付、それぞれの発行日の他、電話の次に八十六刷には2行分の空白があるが九十二刷・九十六刷には右側にHPアドレスが入っており*3、③でも踏襲されている。それから最下部のISBNコードが九十六刷は13桁になっている。
 ③九十七刷改版と九十八刷はカバー一致、本体は目録5頁めまで一致、6〜8頁めは「新潮文庫最新刊」。奥付の異同は九十八刷の発行日の1行が追加されているのみ*4

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 頁付のある最後の頁の次、中央下部に小さく明朝体縦組みで「この作品は昭和三十七年六月新潮社より刊行された。」とあるのは②八十六刷・九十二刷・九十六刷・③九十七刷改版・九十八刷で共通。
 ②八十六刷・九十二刷・九十六刷にはその次の頁に「文字づかいについて」として「四」項目を挙げるが、③九十七刷改版・九十八刷にはない。
 その次に目録、②八十六刷・九十二刷・九十六刷は見開き2頁で一致、全て「川端康成著」。③は1頁め1点め「新潮文庫 文豪ナビ川端康成」で、その代わりに②1頁め3点めにあった「古都」がなくなっている。②の1点め「雪国/ノーベル文学賞受賞」と2点め「伊豆の踊子」が③2〜3点めに移動がしているものの残り5点は②・③ともカバー裏表紙折返しの5点が同じ順序で出ている。2頁めに挙がる6点は同じだが順序が異なり、③はカバー裏表紙折返しの6〜12点めのうち11点め「古都」を除く6点が同じ順序で並ぶが、②は1点め「山の音/野間文芸賞受賞」は同じだが2点めが「眠れる美女毎日出版文化賞受賞」となっている。②は残り4点が「女であること/千羽鶴/みずうみ/名人」の順だが、③では2〜4点め「女であること/みずうみ/名人」そして6点め「千羽鶴」となっている。(以下続稿)

*1:ルビ「すぎ」。

*2:ルビ「むろまち」。

*3:10月27日追記】②九十刷も同じ。

*4:11月14日追記】③百二刷も発行日の1行が追加されているのみ。