瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子『アラベスク』(02)

 昨日まで、いや一昨々日と一昨日『舞姫 テレプシコーラ』の巻末に収録されている対談やエッセイについて確認して見た。私が『アラベスク』の存在を知ったのは、この巻末附録に拠るからである。
・「グラン・フェッテ・アン・トールナン」
 順序から行くと、私が初めて『アラベスク』について知ったのは『舞姫 テレプシコーラ2』巻末のエッセイ、1月18日付「山岸凉子『舞姫 テレプシコーラ』(13)」に挙げた「山岸凉子の"トホホなバレエ体験記"」で、200頁2行め、リード文に「私、すごい罪を犯してしまいました。実は『アラベスク』の32回転は……!」とあって*1、201頁8〜13行め、

 ところで私……実はすごい罪を犯してしまったんです。実は『アラベスク』で「32回転のグラン・フェッテ・ア/ン・トールナン」って言葉が広まりましたが、あれは、グランのつかない、ただの「フェッテ・アン・トールナ/ン」が正しかったのです。きゃー。私もある教則本を見て書いたのですが、だいぶ後に読んだ別の本に「日本で/は間違って使われている」とあって、まずい、私、間違ってしまった! と。この場を借りて皆様にお詫び申し/上げます。「グラン・フェッテ・アン・トールナン」というのは『舞姫(テレプシコーラ)』の中に出てくるイタリ/アン・フェッテのことをいうのだそうです。

と述べてある。これが前回、1月17日付(01)に言及した、『単行本第1部1』38頁=『文庫版Ⅰ』34頁=『完全版Ⅰ』32頁の4コマめ「32回のグラン・フェッテ・アン・トールナン」なのである。いや、説明はその次の頁に挿入される解説に、黒鳥の衣装で踊る女性を大きく描き、その下部に小さく、回転の様子をバレエレオタードの同じ女性の3つのポーズで表し、右上と左下に双辺の囲みに、ゴシック体で

グラン・フェッテ・アン・トールナン
白鳥の湖」第3幕 王子をわなにかけようとする黒鳥オデールによっておどられる32回の大回転/
この連続回転は肉体の限界をはるかに越えた名人芸が要求され舞踊家にとって至難のわざとされています

とある方を引くべきであろう。このシーンについて、後にアーシャが『単行本第1部1』83頁6コマめ「32回のグラン・フェッテ」84頁3コマめ「グラン・フェッテ」との略称で触れている。略称は『単行本第2部1』16頁1コマめではノンナ本人がやはりこのシーンを回想しての心内語に「32回のアントールナン」と見える。
 さらに『単行本第2部1』127頁1コマめ、妊娠したアーシャの代役で「白鳥の湖」第3幕の黒鳥のみヴェータが出演することになったところでも、単辺の四角に、

そしてオデールの32回のグラン・フェッテ・アントールナン!

とあって回転するコマが続き、『単行本第2部1』128頁1コマめにやはり単辺の四角が2つあって、

かならずしも32回まわりきることだけがバレリーナとして偉大なことではないけれども/
このグラン・フェッテ・アントールナンは主役に到達した者がとおりぬけねばならない第一関門といえましょう

と解説されていた。(以下続稿)

*1:二重鉤括弧は半角。次の引用中は二重鉤括弧閉じが半角。