美貌で長身、スタイル抜群で成績優秀の転入生によって、平凡な学校・生徒に波瀾が生じるというパターンの物語は多数あるのだろうけれども、私の読書量では大して多くの例を挙げられそうにない。
・山岸凉子「ハーピー」
50頁の短篇でいろいろな作品集に再録されているが、私が読んだのは文春文庫ビジュアル版『天人唐草 自選作品集』(1994年3月10日第1刷・1998年12月5日第9刷・定価619円・文藝春秋・255頁*1)67〜116頁。
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1994/03
- メディア: 文庫
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主人公は、川堀がわざと自分に示して来る(と思い込んでいる)意味ありげな微笑や太股を見せるような仕草を異様に意識している。しかしこの意識を主人公は最後まで、恋愛感情とは認めないのである。――進学校の、主人公の友人が101頁2〜3コマめに「ちぇっ 体育祭なんてまったく時間のむだだよな/我々はその間単語のひとつも覚えにゃならんときだってのに」と平気でぼやくような環境にあって抑圧された想いは、主人公をして遂に川堀の正体はハーピー(女面鳥獣)であると妄想せしめるのである。
私の高校は進学校ではなくて編入生もおらず、いなくなった生徒もいないのだけれども、そうでなくても吃驚するような美少女もおらず、いや美少女くらいいたのだろうけれども私などの相手になるような存在ではなかったからいないのと同じで、体育祭だってしっかり愉しんで呑気に過ごしていたのであった。
さて、川堀は俊足でリレーのアンカーを走って3人抜きで1着でゴールするのだが、私も2014年8月14日付「ネタバレと引用」*3にも書いたことがあるけれども、高3の体育祭でリレーのアンカーを走ったのだった。
それはともかく、この「ハーピー」を読んで、やはり最近読んだこの漫画と(もっと長くて複雑な話だけれども)その冒頭に於いては同じパターンだな、と思ったのである。
その点に及ぶ前にもう1つ、やはり才色兼備の転校生の登場する作品を取り上げて置こう。(以下続稿)