瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子『日出処の天子』(23)

・連載当時の熱狂(3)
 昨日の続きですが内容は既に「熱狂」ではなくて、昨日紹介した飯田氏の文章についての補足なのですが、便宜上(3)にして置きました。

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 飯田氏は続いて「長編」の「あいた期間に短編を並べ、連載中にもむろん多くはな/いが必ず何作かの短編」という「ペース」を「最良の形である」と指摘し、その効果について考察します(〜52頁15行め)。
 ここまでが「1」章ですが、次の「2」章の書き出しは次のようになっています。52頁17行め〜53頁3行め、

 そんな山岸凉子
 そんな『日出処の天子』――で話が進められれば僕も幸せだが、残念ながらそうもいかな/い。別に物語が完結していないことが問題なのではなく、完結していなくとも言葉にしたいこ/とは大いにあるのだが、しかしそのいずれもが――"いかようにも読ませる要素に長けた作品"/と前述したその要素を主として――結局のところ山岸凉子という人の存在に行き着くものであ/り、翻って、では何故そうなのか? と考え詰める結果に於て、どうしても僕はそれ以前へと/遡っていくことになる。だったら最初へ戻った方が良い。今更と言われようが何と言われよう/が、現在の山岸凉子の存在を問うなら、どうしたって僕は以降のすべてに関わるであろう過去/――『アラベスク』の地点まで歩を返して、今一度語り直してみるのが先決と思うが、どうだ/ろう?


 ここで1行空けて、以下最後まで『アラベスク』を取り上げています。『アラベスク』について論じた箇所は、機会があればまた改めて取り上げることにします。当時はまだ『アラベスク』が完結してから6年(連載開始からでも10年)で、その間に『メタモルフォシス伝』と『妖精王』の連載がありました。
 さて、ここまで引用した文体や「2」章の冒頭で初めて作者名と標題を持ち出すまで、すなわち「1」章のうちでは「彼女」そして「この作品」「この連載」と呼んで(作者名はこの文の題に使われているにしても)目下継続中の『日出処の天子』sensationを匂わせている辺り、なかなか評論らしい書き方になっています。
 最後に若干誤植を挙げて置きましょう。
・23頁下欄右、花とゆめCOMICS第1巻の書影の左にキャプション「▲ 山岸凉子『日出処の天使』(花とゆめCOMICS・白泉/ 社)より」▲は右向き。
・52頁下欄左、花とゆめCOMICS第1巻56頁2コマめを示して右にキャプション「▼『日出処の天使』(花とゆめCOMICS白泉社)より」▼は左向き。
・54頁9行め「厚い障璧を」は「厚い障壁を」。
・54頁16行め「想像を越える体力を用しながら」は「想像を越える体力を要しながら」。
・61頁下欄左の紹介文、

山岸凉子 札幌生れ。昭和44年「レフト・アンド・ラ/イト」でデビュー。代表作に「アラベスク」「妖精女王」/「ティンカーベル」など。


 これが全文ですが代表作『妖精王』が間違っています。主役はダークエルフの女王クイーン・マブではなく妖精王爵です。(以下続稿)