瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子『妖精王』(08)

 昨日、著書カバーの山岸氏の紹介文に触れたが、白泉社文庫『妖精王』初版のカバー表紙折返しの紹介文は2月24日付「山岸凉子『アラベスク』(10)」に引いた『アラベスク』各巻初版に同じ。その右の著者名の両脇の縦の太線は『アラベスク』は茶色であったが、淡い紫色になっている。また紹介文の左は、

+カバーイラスト――山岸凉子  +装幀――羽良多平吉エディックス

と異なっている。
 ついでに5月18日付(07)に指摘した山岸凉子全集20『妖精王3』巻末と、白泉社文庫『妖精王』第3巻の異同について、確認して置こう。
 直前の頁(全集208頁=文庫版112頁)は、クイーン・マブから水の指輪を取り戻すべく、ダーク・エルフの本拠地・摩周湖――ではなくてニンフィディアでは魔州湖に辿り着いた妖精王・忍海爵とプックが、カムイッシュ島へ泳いで渡ろうとして大蛸クラケーンに捕まる場面で、1コマめは湖面に「ザバン」と浮かび上がった蛸の足の1つに搦められ、空中高く持ち上げられている。2コマめは湖面を漂うプックが半べそをかきながら「大蛸クラケーンだ/ど どうして湖に蛸が!! 」と言うのだが、まァそこは漫画だから、何でも出来ちゃうのである。
 さて、一番大きな違いは全集209頁右側、半分強を占める1コマめが文庫版にはないことである。このコマは爵が吹出しなしで「うああーあああ」と叫びながら水中に引き込まれて行くところで、続く全集209頁2〜3コマめ(=文庫版第3巻113頁1〜2コマめ)が既に水中に引き込まれて「ブクブクブク」と息を吐く爵を灰色に網掛けして描いているから、確かに、全集208頁(=文庫版112頁)1コマめとの間に、引き込まれて行くコマがあった方が良いようである。と云うか、このコマを見てしまうと、これが存しない文庫版が酷く唐突に見える。
 しかしながら、ならば全集の方には問題はないのかと云うと、全集209頁1コマめは左辺と下辺に枠線がある(上辺と右辺には枠線なし)のだが、奇妙なことにその左辺が頁の下まで必要もなく続いているのである。何故こんなことになっているのか、は、さらに前の版、初出誌や単行本(花とゆめCOMICS)を見ればもっと説明しやすくなるのだろうけれども、今は疑問のままに止めざるを得ない。
 そして全集の最後の頁、全集210頁は水中深く潜っていくクラケーンを描いている。前回これを1コマのみとしたのはこれは正確ではなく、このコマの右上に「爵/爵」と泣き叫ぶプックのコマ、左下に「ふっふふふ」と笑うクイーン・マブのコマがあって実は合計3コマである。文庫版第3巻では113頁の左側、半分強を占める5(〜7)コマめだが、全集は左右に枠線があるのに対し、文庫版は右にしか枠線がなく、クイーン・マブのコマは全集3コマめでは左右と上の3辺に枠線があるのだが、文庫版7コマめはクイーン・マブの顔から左が切れている。下も胸の谷間の下に全集では服があるのだが、文庫版では谷間までしかなくその下が切れている。しかし上下の余裕ではそれよりも上部、全集が泣き叫ぶプックのコマの上に少しの余裕しかないのに、文庫版ではプックのコマをもう1つ入れられるくらいの余裕があることの方が大きな問題であろう。
 すなわち、文庫版113頁5コマめは、全集では210頁の1頁分使っていたのを、無理矢理前頁と抱き合わせたために左側を詰めて余裕がなくなったように見えるのだが、それ以上に全集の、縦幅を狭くしてまで横幅を出すよう拡大している不自然さは覆いがたい。全集はこのコマの左の枠線の外(ノド)は通常の余裕しかないのだが、右の枠線の外には広告や捨てカットを入れるほどではないが、それなりにアンバランスな余裕を作ってしまっている。これ以上拡大すると上下に支障が生じるくらいに――プックの上辺・クイーン・マブの下が切れてしまうほど目一杯のところまで、拡大している。そうするとむしろ、本来ここは文庫版のような1頁であったのを、全集ではここが巻末になるので切り貼りをして、さらに説明不足を補う209頁1コマめの加筆をして2頁分に、水増ししたのではないか、そんな疑いを持ってしまうのである。
 尤も、ここで分かりにくい憶測を述べるよりか、原稿を見れば、あっさり、かつ、確実に、解決するのだけれども。(以下続稿)