瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

近藤ようこ『説経 小栗判官』(6)

 単行本は「あとがき」の次に奥付、左上に秀英初号明朝縦組みで、1行めは小さく上部「(説経 小栗判官 奥付)」下部に横転「JETS COMICS 136」、2〜3行め「平成二年五月一日    初版発行/平成六年五月十五日   第三刷発行」、4行め「著   者       近藤ようこ」著者名の左脇に横転「C 1990 KONDO,Yoko」その左に「近藤/ようこ」印(0.9×0.8cm)、5〜6行め「発 行 人       麻  木  正  美/発 行 所       株 式 会 社 白 泉 社」とあり、7〜8行めは2字半下げで小さく「住所:東京都千代田区西神田三ノ六ノ四   郵便番号:一〇一」「電話:〇三-三二六五-一九九七(編集)/〇三-三二六五-一九一九(販売)」とある。9行め「企画編集       マガジンファイブ」10行め「装   幀       祖父江慎(コズ・フィッシュ)」装幀者の左脇に小さく11行め「メイン写植印字:高橋幸宏(制作舎)」12行め「印刷製本       株 式 会 社 廣 済 堂」13〜15行めは小さく「乱丁・落丁本はおとりかえいたします。定価はカバーに表示してあります。/Printed in Japan/ISBN4-592-13136-3 C0079 P880E HAKUSENSHA」奥付の裏は真っ黒。
 文庫版は目録の次に奥付がある。ちくま文庫の奥付については、角川文庫・新潮文庫白泉社(文庫)ほど見ていないので、今は詳細に及ばないことにする。
 本編の異同は、章扉と頁付である。
 章扉には頁付はない。左上部に縦組みで章題が入るが、単行本は内寄りにこぢんまりと秀英初号明朝で「申し子」文庫版は大きく行書体で「第一章 申 し 子」、新装版は隅に寄せて明朝体太字で「第一章 申し子」とある。
 頁付は下部小口側にあって単行本と文庫版は一致。新装版はコマに接する程であった位置がコマから離れ、斜体になり、数が2つ少ない。
 本編の説明は四角の枠にゴシック体、台詞は明朝体、心内語は楷書体。すなわち、冒頭と末尾の説経説きの語りが文庫化に際して組み直され、章題が単行本・文庫版・新装版それぞれ異なっている他は、単行本をそのまま縮小し(新装版はさらに頁付を打ち直し)ただけのように見える。
 しかし、どうもそうではないらしいのである。「第七章復活」の161頁3コマめ、復活した小栗の台詞、文庫版では「おれは海道七カ月を‥‥」とある。おかしいと思って単行本を見るに「おれは海道七ヵ国を‥‥」とある。158頁の四角の枠の説明、1コマめ「上野が原を出発して四百四十四日め  」2コマめ「熊野本宮湯の峯にお入りになります」とあって7ヶ月ではない*1。152頁2コマめ、常陸小萩(照手)の台詞に「海道七か国に…」、180頁1コマめ、小栗の台詞に「‥‥海道七カ国を‥‥」とあって、相模・伊豆・駿河遠江三河尾張・美濃の7ヶ国なのだろうから、何故ここだけ「七カ月」とわざわざ改めたのか、良く分からない。とにかく文庫版は単行本をそのまま縮小したのではなく手を入れているのである。この他にも何かあるかも知れない。
 なお「第六章物狂い」には「湯の峰」とある*2のだが、「第七章復活」では先に引いた158頁など「湯の峯」となっている。今、手許に単行本がないのでこれ以上突っ込まないで置くが、ちょっと注意して置く。(以下続稿)

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 本書についてはこれにて一応切り上げる。新装版を見ることを得たら続けることにする。
 ふと、――説明や吹出しに原文を入れた版を作れないか、と思った。全て原文に置き換えられる訳ではないから、一部は現行の版のままにせざるを得ない。そこは字体を変えて区別が付くようにして置けば良いだろう。原文にあっても枠や吹出しに入らない文句は敢えて挿入しない。……そんなに売れるとも思えないが、今時の国文科の学生にはむしろ丁度良いのではないか。教科書として採用すればある程度は捌けるだろう。セット販売しても良いかも知れない。いや、……あんまり現実味のない想像だな、我ながら。

*1:常陸小萩(照手)が引いて、4日で美濃の国青墓の宿から150頁2コマめ「西近江の関寺」まで移動しているのに、他の行程に440日も掛かるとは(若干の停滞があったとしても)思えないのだけれども。

*2:一例として152頁5コマめ「熊野本宮湯の峰にお入りになって‥‥」を挙げて置く。