瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

正岡容『艶色落語講談鑑賞』(22)

 本書の中核を成し標題にもなっている「艶色落語講談鑑賞」は雑誌「あまとりあ」創刊号から連載されたものをまとめたものである。「あまとりあ」の第三巻までの細目は、「thepiratebayのブログ」の2015-05-02「月刊 あまとりあ 第一巻目録2015-05-03「月刊 あまとりあ 第二巻目録2015-05-10「月刊 あまとりあ 第三巻目録」に示されているが、創刊号「艶色落語「長持」」第一巻第二号「艶色噺「吉原百人斬」」第一巻第三号「艶色落語「数取り」」第一巻第四号「小町娘想呉竹」第一巻第五号「艶色噺「島めぐり」」第一巻第六号「艶色噺「鬼神のお松」第一巻第八号「艶色落語「菊重ね」」第一巻第九号「艶色話「乳房榎」」第一巻第十号「艶色落語「蛙茶番」第一巻第十一号「艶色落語「尻餅」」第二巻第一号「「在原草紙」」第二巻第十号「艶色話「幸手堤」」という順序で、6月27日付(03)に示した本書の収録順とはかなり異なっている。
 なお、連載は第二巻第十一号「艶色噺「紀州飛脚」」第二巻第十二号「艶色噺「佃の篝火」」第三巻第一号「姫がたり」第三巻第二号「艶色落語「お茶汲み」」と続いているが、これらは単行本に収録されないままになっているようだ*1。正岡氏は第三巻第三号に「寄席艶女抄」を寄稿しているが、以後「あまとりあ」には執筆していないようである。
 そこで本にまとめるに際して配列を変更した理由だけれども、永井啓夫「跋」に、362頁6行め、『完本正岡容寄席随筆』では419頁下段8〜9行めに

 先生の作品を鑑賞するに当つて、忘れてはならないものに/*2“季節感”がある――。

として、本文中から実例を2つ挙げ、363頁7〜9行め、『完本正岡容寄席随筆』では420頁上段5〜9行めに、次のように解説する。

 落語鑑賞のホンの一寸した部分にさへ、このやうに情趣豊かな“季節”を感じていらつしや/るのであり、こゝに収めた「艶色落語講談十二席」が、期せずして春秋秋冬十二ケ月の順序に/編まれてゐることが何よりも作者の態度を物語つてゐるのである。


 ここは『完本正岡容寄席随筆』ではちょっと印象が変わっているので、別に引いて見よう。420頁上段5〜9行め、

 落語鑑賞のホンのちょっとした部分にさえ、このように情/趣豊かな“季節”を感じていらっしゃるのであり、ここに収/めた「艶色落語講談十二席」が、期せずして春夏秋冬十二カ/月の順序に編まれていることが何よりも作者の態度を物語っ/ているのである。


 それはともかく、初出誌の配列を改めた理由はこれで明確であろう。「跋」の末尾、364頁12行め、『完本正岡容寄席随筆』420頁下段11行めに、下寄せで「(昭和二十七年八月十五日記)」とあるが、その後刊行までの4ヶ月の間に「艶色落語講談鑑賞」と改められたのである。なお、この「跋」の書き方だと標題は「艶色落語講談十二席」とは別のものが用意されていたように読める。6月28日付(04)等に指摘したように「艶色落語講談鑑賞」でもこの1冊の標題には相応しくないのだけれども「艶色落語講談十二席」では「十二席」に限定してしまうから、いよいよこの1冊を統べる標題としては不自然である。当初の標題は「艶色落語講談鑑賞」ではなかったろうと思うのだけれども、それではどんなものだったのか、見当が付かない。

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 昨日紹介した巻末の広告にあった岡田甫『川柳愛慾史』は刊行されているが、池田文痴庵らぶれたあ艶舞曲』は未刊に終わったらしい。(以下続稿)

*1:2019年4月13日追記2018年2月18日付(25)に述べたように『風流艷色寄席』と云う本に纏められていた。『風流艶色寄席』はその後、閲覧することが出来たがまだ記事にしていない。

*2:『完本正岡容寄席随筆』の改行位置。表記を現代仮名遣いに改めているが、一々指摘しない。続く“ ”は『完本正岡容寄席随筆』では半角。