瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山本禾太郎「東太郎の日記」(07)

・「週刊朝日」の「新大衆文藝『事實小説』募集」(3)
 10月12日付(05)の続き。
 日を改めて仕事帰りに再びその施設を訪れ、やはり書庫請求の機会は1度しか許されないくらいの時間しかありませんでしたが、もう何を見るべきかは分かっています。昭和8年(1933)7月2日号と昭和9年(1934)新年号を閲覧請求して、早速複写を取り、閉館までに必要事項の確認をしました。
週刊朝日七月増大號 第廿四卷第一號 昭和八年七月二日發行・定價十二錢・42頁・B4判並製本
 この頃の「週刊朝日」は判型がまちまちです。製本されているため、裏表紙の左側にあるはずの通巻号数などは確認出来ませんでした。12頁は8段組で1行15字、1〜3段めの3行は前の記事の続きで、次に明朝体で3段抜き、1行め上寄せ、2行め中央、3行め下寄せで「 小川巡査の正體/彼の學校友達が語る/藤 澤  鶴 雄 」とあって、前の記事もそうなのですが昭和9年(1934)6月18日に発生した安田銀行玉島支店強盗殺人事件に関する記事で、見出しから予想されるような内容ではなく、犯人のこれまでの女性関係について、なかなかの同情をもって書かれています。
 それはともかく、この頁の左下に幅0.3cmの飾り枠のある囲み記事、4段抜きで大きさは飾り枠のやや内側にある白線の寸法を計るに14.8×9.7cm、上部、5段めに当たる位置に、10月11日付(04)で見た第一回の募集記事と同じ手書きの文字で、やはり右からの横書きで「〈新大衆/文 藝〉『亊実小説』〈第二回/募 集〉」とあります。〈 / 〉で示した角書きは縦書きで「第」は「才」に似た略字、二重鍵括弧『 』は字間に小さく入っています。そのすぐ下、5段めと6段めの間の高さにゴシック体横組みで大きく「圓百五千壹金賞」とあって下に横線(5.5cm)があります。以上が見出しでその下は2段組み、6〜8段めの半ばまでに位置しています。まず右に2段抜き(上下2字分空ける)で明朝体3行、

 わが「週刊朝日」は昨年新大衆文藝「事實小説」を懸賞募集し、異常の成/功を收めたが、今回第二回目の募集を行ふことゝした。左記條件のもとに前/回に増して多數力作を寄せられんことを。*1

とあって、上段に、

一 等 (一篇 五 百 圓
二 等 (二篇 三百圓宛
佳 作 數篇を採用、殘り四百圓を
 分割贈呈する。
枚 數 四百字詰原稿用紙五十枚内
 (一枚以内の梗概を必ず冒頭に附す
 ること)
内 容 現代物に限る
締 切 昭和八年九月十五日(同日
 附發郵のものまで)
發 表 當選發表は昭和九年一月發
 行「週刊朝日」新年特別號誌上

とあります。
 下段は次のようになっています。

選  者  「週刊朝日」編輯局
版  權  採用せしものゝ版權、放送
 上演並に映畫撮影權等は朝日新聞社
 れを保有
送  先  大阪市北區中之島大阪朝日
 新聞社内週刊朝日」編輯局事實小説係
返稿その他 誌上匿名は差支なき
 も住所氏名は原稿に明記のこと△條件
 その他に關する御照會には應じ難し
 原稿返送を望まるゝ必ず送附の
 際、所要切手を貼付し住所、宛名を明記
 したる返送用封筒を同封されたし。右
 以外のもの、又は後日の返稿申込みに
 對しては遺憾ながら一切應じ難し
 ほ返稿は當選者發表後と承知されたし


 二等の賞金は第一回の倍で、第一回の一等と同額になっています。締切が1ヶ月早くなっていること、そして「返稿その他」を目立たせ細々と注意を与えているのは、第一回の反省に拠るものでしょう。(以下続稿)

*1:ルビ「しうかん・しう・げい・じじつ・せつ・けんせうぼしう・い/こう・をさ・ぼしう・きぜうけん/ま・すう・よ」。