瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Géza von Bolváry “Abschiedswalzer”(2)

 12月22日付(1)の続き。
 この映画(フランス語版“La chanson de l'adieu”)の公開時の反響については「幸太のコラムlivedoor日本ピアノ文化史 Piano Cultural History in JAPAN」の「17, 映画「別れの曲」1935・昭和10年/17-1、映画「別れの曲」1935(昭和10)年6月封切」に詳しい資料紹介があります。
 戦後、やはりフランス語版が再上映されたことについては、前回、大林監督のコメントや当時のパンフレットを上げて置きました。
 さらに昭和末年にTV放映もされたのですが、このときフランス語版ではなくドイツ語版が放映されました。DVDのAmazonレビューには、このTV放映に触れたものがいくつかあります。すなわち、発売後一番最初に投じられた、永田喜嗣の2010/3/16「★★★★★再見できる喜び」というレビューは簡にして要を得た内容で「‥‥/ドイツ版もフランス版ももう20年位前にNHK教育で放映されたが、その後VHS,LD.DVDと発売がなかっただけに今回のリリースは嬉しい。/このDVDはオリジナルのドイツ版である。/NHK放送時には欠落していたシーンもこのDVDでは切れてないし、画質もいい。/‥‥」とあります。このうち、NHK教育は「世界名画劇場」という番組(1977.1〜2003.3)なのですが、どうもフランス語版は放送されていないようです。
 もう1つ見て置きましょう。「匿名希望」の2010/5/31「★★★★この作品にまた出会えて嬉しいです」というレビューには「1986年にNHK教育でドイツ語版を見ました。それ以降テレビ放送や映像ソフト化がされなかったのでこの作品をもう二度と見ることはできないと思っていました。ですから今回のDVD化でまたこの作品に出会えたことはすごく嬉しいです。NHKでカットされていたシーンもありましたし、画質や音質もNHKの時よりきれいで良かったです。/‥‥」そして字幕が違うことについて「違和感」を表明した上で「‥‥/あともう1つ残念だったのがリストがショパン英雄ポロネーズを弾く前のシーンがカットされていた所です。DVDではいきなりピアノを弾き始めていましたが、本当はリストが階段を上がっていってピアノに置かれていた楽譜を見てから英雄ポロネーズを弾き始めたはずです。どうしてこのシーンがカットされてしまったのでしょう?これらがなければ完璧だったのに残念です。/‥‥」とあります。
 NHK放映時にカットされていた場面がDVDに存している、というのは永田氏と同じです。どの場面なのでしょうか。NHK放映時に存したシーンは、レビューに具体的に指摘されていますので、すぐに分かりました。

 DVDでは、パリのプレイエルの店の二階の場面、プレイエルに楽譜出版を断られて落胆するショパンと、弟子を励ますエルスナー先生が話し込んでいると、リストが立ったまま英雄ポロネーズを弾き始めるシーン(01:02:46〜)にいきなりなるのですが、確かにこの動画を見るに、英雄ポロネーズを弾き始める前(1:25〜1:54)に、リストが螺旋階段を上ってピアノにある楽譜を見て顔色を変えて、という段取りがありました*1
 もう少しその前段から説明すると、――ロンドンの演奏会で大成功を収めてパリに戻ったフランツ・リストに、ジョルジュ・サンドが自分が発見した「新たな天才」ショパンを世に出すための助力を頼みます。そこでリストはプレイエルの店を訪ねて、ショパンが直前まで弾いていたピアノに開いたままになっていた楽譜を見て、ショパンの師弟は別室にいるので(硝子窓で見えていますが)リストは気付いていないのですが、まず立ったまま弾き始め、そして進むに従って興に乗って嬉しそうに弾きまくるということになるのですけれども、天才が天才を知った喜びに溢れる演技は、ベタではありますが(漫画みたいです)力があります。さらに2人で片手ずつ弾いて握手するというシーンに至っては、本当に漫画みたいです。
 このリストを演じているHans Schlenck(1901.3.14〜1944.11.13)がハンガリーの前線で死亡した頃、アメリカで制作されていたのが、日本では昭和24年(1949)7月12日に「楽聖ショパン」と題して公開されたカラー映画“A Song to Remember”です。

 この映画の脚本を脚色して作られているので同じ場面があります。未見ですがあらすじ等を見る限りでは、話を拡げすぎて散漫になっています。キャストもドイツ語版の方が宜しいように思います。

 なおドイツ語の題は「別れのワルツ」で、エチュード「別れの曲」ではなく、Waltz Op.69 No.1(遺作)がそれに当たります。(以下続稿)

*1:某動画サイトにあるFull映像にもこの段取りがありません。或いは日本語字幕を非表示にしたものを上げたのでは、と思われるのです。