瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松葉杖・セーラー服・お面・鬘(22)

 どうも間を置き過ぎて自分でもどこまで整理したか曖昧になって来ましたが、これ以上空けるといよいよ訳が分からなくなりそうなので、少し続きを整理して見ました。
ギンティ小林新耳袋大逆転』(6)
 3月24日付(21)の続き。
 そしていよいよ単行本『新耳袋大逆転』及び文庫版『新耳袋殴り込み 第二夜』の、小林氏本人が怪人物を目撃する件となります。単行本90頁7〜18行め(改行位置「/」)文庫版77頁16行め〜78頁11行め(改行位置「|」)単行本はこの目撃談の前を1行空けていますが文庫版は詰めています。

 季節は冬になろうとしていた。ある日の夕方、僕は地元の駅で友人たちと立ち話をし|ていた。する/と……*1
 カツン、カツン、カツンと杖をつく音が聞こえてきた。音のするほうを見|ると、松葉杖をついた女/が立っている。*2見ると、足は一本しかない。*3顔は……、見ちゃいけない!*4 僕は必死に逃げた。
「俺もサリーちゃんを見ちゃったよ!」
 次の日、教室に入るや否や叫んだ。
「いつまでも、そんな話してるなよ! 可哀想なと思わねえのかよ! 自分がそうなっ|たらどんな気/持ちだよ」
 正義感の強いバカに怒られてしまった。バカは勉強に夢中だった。中学三年生の僕た|ちには高校受/験が待っていた。受験ムードが高まると同時にサリーちゃんの目撃情報も|減り、年が明けた頃にはサ/リーちゃんの目撃情報をまったく聞かなくなってしまった。
 そしてサリーちゃんのことを誰も語らなくなっていた。


 2月7日付(2)に単行本『新耳袋殴り込み』及び文庫版『新耳袋殴り込み 第一夜』の記述を引用しましたが、そこでは「友達を置いて真っ先に逃げ」ると云う「失態」のため「教室内での地位は暴落した……」と云うことになっていました。翌日登校早々目撃談を自慢げに話そうとしているここの記述とは噛み合わないように思われます。
 「不思議ナックルズ」の記事(引用は再録である『恐怖の都市伝説ファイナル』に拠る)にも『新耳袋殴り込み』の「まえがき」が引用してありましたが、こことの異同として注意されるのは、2月29日付(17)の最後に引用した「3本足」と呼ばれていた理由について2つ説を挙げたことについて、続けて釈明して、『恐怖の都市伝説ファイナル』065頁上段1〜5行め、

‥‥。小林自身、/実物を目にした割に曖昧な表現である。/「サリーちゃんが姿を現した途端にダッ/シュで逃げたから、実はよく見てないん/です……おっかなくて……」

と言ったことになっていることです。すなわち、この段階では小林氏は足の数を曖昧にしていたのですが、『新耳袋大逆転』では「一本」と断定的に書いているのです。
 バカの台詞も「不思議ナックルズ」に既に出ていますが、『恐怖の都市伝説ファイナル』066頁中段6〜10行め、

 中学生たちがその正体について真剣な/議論を交わしていると、決まって「そん/な話するなよ! 可哀想だろ! 自分が/そうなったらどんな気持ちだよ」と話を止/めようとする正義感の強い者がいた。‥/‥

とあって、シチュエーションが異なります。
 もちろん、小林氏は『新耳袋大逆転』及び文庫版『新耳袋殴り込み 第二夜』に書いた方を以て決定版とするつもりなのだと思うのですが、私はこの類の記憶の合理化は信用しづらいと思っているので、敢えて対照させて置く次第です。(以下続稿)

*1:文庫版は「と……」がなく「‥‥。するカツン、‥‥」と続けているが、誤ってこの1行を消去してしまったのだろう。

*2:文庫版はここで段落を改める。

*3:文庫版はここでも段落を改める。

*4:文庫版はここも段落を改める。