瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

『大鏡』の文庫本(2)

岩波文庫30-104-1(2)
 前回の続き。
 偶々手にした第34刷にて、校注者の最晩年に「補説」や「系図」の増補が行われていたことを知って、それ以前のものを見たくなって近所の図書館を覗いてみると、カバーの掛かっていない時期の第22刷があったので早速借りて、第34刷と比較してみた。
 まず第34刷の「補説」にて「わかりにくい表現を改め」たとされていた3〜6頁「凡  例」を見るに、「一 本文」の項、11条挙げるうちの8条め(4頁1〜9行め)が組み直されていた。〔 〕は半角。
 第22刷では次のようになっていた。「/」は改行位置。

8 底本において訂正・校正の施されている字句については、
 A 訂正・校正される前の字句に、それもまたそれで意義が認められる場合は、前の字句を/
   そのままにし、併せて訂正・校正の状況をも示した。
 B これに反し、前の字句が、単にまた明瞭に過誤であるに過ぎない場合は、訂正・校正さ/
   れたものだけを掲げた。
 C Aの場合、底本において斜線を用いて抹削したもの(見せ消ち)は、〔 〕を付して本行に/
   組入れた。
 D 底本では、字句を補うのに、おおむね、補い入れるべき字間に ◦ 符を付し、その右傍に/
   細書してあるが、Aの場合には、( )を付して本行に組入れた。


 これが、第34刷では次のように改められている。

8 底本において訂正・校正の施されている字句については、
 A 本文において斜線を用いて抹消したもの(見せ消ち)は、〔 〕を付して本行に組入れ/
   た。
 B 底本では字句を補うのに、おおむね、補い入れるべき字間に○符を付し、その右傍/
   に細書してあるが、本書では、( )を付して本行に組入れた。
 C その他、明瞭に過誤に過ぎない場合の補入もあるが、本書ではそれらを( )で括ら/
   ず、そのまま本行に組入れた。(この場合、日本古典文学大系本では*印を付し、原/
   状において説明した。)


 第22刷のC・D・Bが、A・B・Cの順になっている。
 他はそのままとなっているが、凡例最後の「五」項め、6頁10〜12行め、

五 本書の校注に際しては日本古典文学大系21「大鏡」を基としたが、裏書・現状・読法・補/
 注・地図・系図等はすべて省略した。また該書の頭注・補注等の誤は最近の諸研究を参照しつ/
 とめてこれを訂正した。ここに学恩に対し深く感謝の意を表する。

も、338〜341頁に「新しく略系図を付載した機会」に「系図」を削除すべきであったろう。(以下続稿)