瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

草輕電氣鐵道(2)

 4月9日付(1)の続き。
 なお、ネットで「鶴溜」を検索したところ、内田康夫(1934.11.15生)の『死線上のアリア』がヒットした。
・角川文庫11415(平成十二年三月二十五日初版発行・定価533円・301頁)

死線上のアリア (角川文庫)

死線上のアリア (角川文庫)

 これより以前に単行本が飛天出版より、新書判がカッパ・ノベルス、文庫版が徳間文庫から刊行されているが、見ていない。短篇集で角川文庫版は7篇を収録、3篇め、89〜124頁「交歓殺人」に、この地名が出て来る。295〜301頁、山前譲「解説」に、300頁8行め「「交歓殺人」(『問題小説』昭60・2」とある。
 95頁6〜13行め、

 大庭家のある鶴溜*1から南軽井沢のひぐらし荘まで、車で十分かそこいらの距離である。/「鶴溜」という地名は、昔、この辺りの沼地に鶴が渡来してきたことに由来するのだそうだ。/土地の古老に訊いても、鶴の姿を見たことはないらしいから、よほどの大昔なのだろう。
 鶴溜は離山*2の裏手の奥、星野*3温泉に近い別荘地で、大庭家はそこに広大な土地を持って/いる。土地といったって、もとは人も住めないし、作物も稔*4らない、といったような原生/林だったのだが、現在は違う。旧軽井沢辺りがむやみに開けて、夏は東京の原宿と変わら/ないような具合になってしまったようなのとは対照的に、ふんだんな自然に恵まれ、野鳥/やリス、キツネなどにも出会える、ほんとうの意味で別荘地というにふさわしい場所だ。


 さて、角川文庫版では「鶴溜」に「つるだめ」の振仮名を付しているが、今昔マップ on the webで閲覧出来る昭和12年修正1:50000地形図「輕井澤」でも「つるだまり」である。草軽電鉄廃止後に読み方が変わったのであろうか。
 カバー表紙折返しには帽子をかぶった白黒写真に、縦組みで、

内田康夫(うちだ やすお)
東京都出身。日本中を東奔西走し、日/本人の心を描き続ける。語り口は軽妙/にして鋭敏。現在、軽井沢に在住。

とある。執筆当時から軽井沢在住でなかったとしても、文庫化に際して修正は出来たろうから、やはり現在は読み方が変わっているのであろう。(以下続稿)

*1:ルビ「つるだめ」。

*2:ルビ「はなれやま」。

*3:ルビ「ほしの」。

*4:ルビ「みの」。