瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

横溝正史『犬神家の一族』(1)

 昨日書いたことどもは、三本足のサリーちゃんに関する記事「松葉杖・セーラー服・お面・鬘」に、息抜きとして付け足そうか、くらいに思っていて、別に『さよならドビュッシー』と題する記事にしようとは思っていなかった。だから映画版を見てから1ヶ月、TVドラマからだと2ヶ月半、何の準備もしていなかったのだけれども、それが、急に書こうと云う気分になったのは、先月末以来、映像化された替え玉トリックの作品を2本見たからである。
・映画(1)市川崑監督
 2013年7月14日付「角川文庫の角川映画の広告(5)」に書いたように、見たことはあって、部分部分――例えばマスクの佐清とは別に本物の佐清がいること、菊人形や湖面に足が突き出すところ――は覚えていたのだが、キャストは殆ど忘れていて、犯人が誰だかも覚えていなかった。だから最後まで大変興味深く見ることが出来た。
 2015年1月22日付「Agatha Christie “Murder on the Orient Express”(1)」に書いたように、手間暇掛けて変な殺し方をして見せると云う設定が苦手なのだけれども、この映画では「斧琴菊」も申し訳程度に持ち出されて、不自然とは感じなかった。そう云えば『さよならドビュッシー』も主人公の少女の境遇に注意しつつ、オチが分かって見たこともあってミステリー部分には引き摺られずに、すんなりと見ることが出来た。

 島田陽子がヒロインだったことも全く覚えていなかったが、リメイク版では松嶋菜々子がやっているらしい。
犬神家の一族 通常版 [DVD]

犬神家の一族 通常版 [DVD]

犬神家の一族(2006年版) [DVD]

犬神家の一族(2006年版) [DVD]

【映画チラシ】犬神家の一族 2種

【映画チラシ】犬神家の一族 2種

 しかし、最近TVドラマで戦前のことを描いても分際の違いと云うものが全く問題にされなくなって来た。制作側も分からないし、役者にはもっと分からない。言葉遣いが全くなっていない。分際の違いを意識して敬語を正しく使用する機会がないからである。しかし戦前であれば、映画や落語の録音など、時代の写しを再生することが出来る。だから、きちんと調べて脚本を書いて、慣れない役者に宜しく指導して演じさせれば、ある程度真似することは出来るはずなのだが、今やその努力を初めから放棄してしまったようである*1。――確かに、実際に戦前を感じた役者たちのような風格は出せない。ならばいっそのこと、もう戦前ごっこなどしない方が良いだろう*2

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 それから、替え玉のトリックが鮮やか過ぎて、評論家と大学教授を惑わせてしまった例を、2015年10月1日付「山本禾太郎『抱茗荷の説』(06)」等で検討したことがある。(以下続稿)

*1:2015年11月26日付「山本禾太郎「第四の椅子」(10)」の付け足しの余談に、同じようなことを述べたことがある。

*2:朝の連続テレビ小説のことだけれども、わざわざ批判しようと云う意欲も湧かない。