瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小林信彦『回想の江戸川乱歩』(11)

・対談「もう一人の江戸川乱歩」(4)
 7月7日付(10)の続き。
・単行本33頁1行め「信彦 まあ、こっちが楽ってことも、‥‥」→文春文庫版39頁1行め「信彦 まあ、その方が楽ってことも、‥‥」=光文社文庫版39頁3行め
・単行本34頁7〜8行め「‥‥、そのヒッチ/コックの接待場所まで、‥‥」→文春文庫版40頁5〜6行め「‥‥、そのヒッチ|コ/ックの接待場所の設定まで、‥‥」=光文社文庫版40頁8〜9行め
・単行本36頁12〜13行め「‥‥、乱歩さんが「あの男は、なかなか俺の言うこと/を聞かない」って、‥‥」→文春文庫版42頁9〜10行め「‥‥、乱歩さんが「あの男(小林信彦)は、なかなか|俺/の言うことを聞かない」って、‥‥」=光文社文庫版42頁13〜14行め
・単行本39頁8〜9行め「‥‥、日影丈吉さんという作家がい/て、あの人は作家と同時に、‥‥」→文春文庫版45頁6〜7行め「‥‥、日影丈吉さんという作家がいて、|あ/の人は作家であると同時に、‥‥」=光文社文庫版45頁10〜11行め
・単行本40頁12行め「信彦 真野律太さん。‥‥」ルビ「まのりった」→文春文庫版46頁10行め「信彦 真野律太さん。‥‥」ルビ「まのりつた」=光文社文庫版46頁14行め
・単行本41頁2〜3行め「信彦 それから戦前からの校正者で、『ゼロの焦点』に朱筆を入れた神尾さんという/人もいた。」→文春文庫版46頁15行め〜46頁1行め「信彦 それから戦前からの校正者で、『ゼロの焦点』に朱筆を入れた神尾重砲さんと|い/う人もいた。」=光文社文庫版47頁4〜5行め
 これに続く『ゼロの焦点』と松本清張にまつわる話は、全文を抜いて置こう。まずは単行本41頁5行め〜42頁2行めの小林信彦の発言。

信彦 うん。『ゼロの焦点』というのは、ものすごい間違いが多かったんですよ、時/間的な。ゲラが真っ赤になってましたからね。ぼくは、『宝石』の編集長に連れられ/て挨拶に行ったの。『宝石』の編集長が松本清張さんに、「先生、間違いがこれだけあ/ります」と言ったら、「雑誌はゲラと同じだから」って言うんですよね。ぼくは、そ/のとき、かなりムカッとしましたけどね。今になってみると、そう言う気持ちも分か/らないではないけれど(笑)。しかし、「雑誌はゲラだ」って言われたのには、参っ/た。
 清張さんでいうと、おかしいのは、『ゼロの焦点』が雑誌で完結したんですよ。完/結して光文社から出ることは、もう決まっていたのね。当時は全部光文社だったか/ら。コピー機なんてないから、原稿の最終回ができ上がると、光文社の人が、横で筆/写しているんだって。それで最終回が『宝石』に載るより一日早く単行本が出ちゃっ/たの(笑)。何年間にわたる連載なのに、最後の犯人とか結末が先に単行本で出ちゃ/ったんですよ。


 文庫版との異同であるが、単行本41頁5行め「ものすごい間違いが」が、文春文庫版47頁3行め=光文社文庫版47頁7行め「ものすごく間違いが」になっている。

ゼロの焦点―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-1))

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ゼロの焦点 カッパ・ノベルス創刊50周年特別版

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 さて、この「ものすごい」もしくは「ものすごく間違いが多かったんですよ、時間的な。ゲラが真っ赤になってましたからね。」について、私は、やっぱりな、と思ったのである。『ゼロの焦点』は読んでいないので何とも云いようがないのだけれども、――優秀な編集者のチェックにより表面に出なかった誤りが松本氏の作品には多々あったであろうことは、見逃されてそのままになっている、かなり重大な誤りから推測されるところであった。改版に際して訂正された、2013年5月12日付「松本清張「西郷札」(5)」等で見た「西郷札」の主人公の年齢のような例もあるのだけれども、未だに見逃されたままになっている、と云うか、もう訂正のしようがない2013年4月7日付「松本清張「西郷札」(2)」に指摘した、西郷従道の描写のような例もある。それから名作の誉れの高い「装飾評伝」も、2012年9月14日付「松本清張「装飾評伝」(1)2012年9月15日付「松本清張「装飾評伝」(2)2012年9月16日付「松本清張「装飾評伝」(3)2012年9月17日付「松本清張「装飾評伝」(4)2012年9月18日付「松本清張「装飾評伝」(5)」に指摘したように、設定はかなり杜撰と云わざるを得ない。同じ頃のやはり名作とされる「真贋の森」も、年齢の齟齬が指摘される。芥川賞受賞作「或る「小倉日記」伝」もやはり主人公になりきれずに書かれていて、いづれこれらについても記事にするつもりである。(以下続稿)