8月25日付(1)に引いた、カバー表紙折返しの紹介文にあるように、この漫画の主人公は「イラストレーター星由良子」と云うことになっているのだけれども、Amazonレビューその他でも指摘されているように、全てではないにしても相当部分が作者本人の体験を元にしているらしい。
伯母の遺産が入ったことでKの土地を手に入れた主人公は、『1』133頁1コマめ、「さーてと次は建築デザイナーを探さなくてはね」と言い出す。何故なら、137頁3コマめ「わたし以前金沢旅行で忍者屋敷を見て以来/あんな風なカラクリの家をずっと建てたいと思っていたのよ」と云うのである。しかしこの、137頁1コマめ「ずばり!“カラクリ屋敷”です」は後半、家相を気にするようになってからは全く考慮されなくなってしまう。
最終的に主人公は自分の望み通りの家を建てて、幸運に恵まれるのだが、そこに至る経緯がまぁ何というか好い加減で、脇役の2人は姪や編集者(かつ姪の婚約者)だから付き合っているけれども、そうでなければ「付き合いきれまへんわ!」と見放しているところだろう。気が短い私にはとても付き合いきれない。まぁ私もかなり気まぐれではあるのだけれども。
さて、主人公は、最終的には断ってしまう(!)のだけれども、144頁5行め、姪の紫苑の「それでなくとも常軌を逸した由良子さんにはもっと尋常なデザイナーさんを望むわ わたし」と云う心配を余所に、145〜146頁
[[しかし(またも! ですが)]]
主人公:「見つけたの わたし!/テレビで放映してたのよ 録画しておいたから見て!見て!」
紫苑:(帰る早々なによ)/
リモコン:ピッ
主人公:「これよ “すべてが引き出しの家”というのよ
テレビ画面「完成!!/――――・ハウス」/
紫苑:「はあ? 引き出し」(なんじゃそりゃ)/【145】
主人公:「わたしこれの放映終了後 即テレビ局へ電話して設計者を聞き出したわ」/
紫苑「そ それはまた 迅速な行動を」(目的のためには突進するのよ この人)/
主人公:「わたし絶対この人にデザインお願いするわ」背景に光る星や花/【146】
コマ移りの位置を「/」吹き出し移りの位置を「/」で示した。[[ゴシック体]]は語り手紫苑のナレーション。( )で括った心内語は小さく手書き。
以下、147〜148頁に録画を見ながらの主人公の説明が続き、150頁1〜3コマめ、
主人公:「デザイナーはne*doという人なのよ」/
紫苑:「? 変わった名前」/
主人公:「テレビ局の人も不思議そうに言ってたけど」
手書き吹き出し:(視聴者の問い合わせ先に聞いた)/
とある。そして「田中角栄の家も」ある「山手線内のM駅」に近い「お屋敷街」を訪ねるのである。ところで「ne*do」は設計事務所の名前で人名ではないのだが、152頁4コマめで紫苑が(男所帯… そうか ne*doはこの集団の名前なのね)と気付くまで、人名と勘違いしたままである。
さて、主人公が見た番組はテレビ東京の「完成!ドリームハウス」の#32 2004/01/23「引き出しの家」で、施主と建築家が親子と云う回であった。
私はこの番組を殆ど見たことがなく、設計や建築について全く知識がないので「ne*do」の読みも「漫☆画太郎」の☆と同じように*は飾り(?)と心得て「ネド」と思っていたのだが*1、152頁1コマめに「いらっしゃい 代表のSです」と言って登場するのがデザインオフィス 「nendo」代表の佐藤大*2(1977.12.24生)なのである。「平均年齢」が「27」の「カンジのいい人達ばかり」の設計事務所なのだけれども、155頁4コマめ〜156頁に
[[この時わたしも由良子さんも全然知りませんでしたが/【155】S氏率いる処のne*doはこの業界が注目する新進のデザイナー集団で/このあとさらに有名になっていくのでした/でもってその才能がどのくらいすごいかというと…]]/
担当I:「これがA案でB案さらにC案です」
主人公:「うわあ どれもこれもすごっ!」
[[…と ここで彼らのビックリするようなデザインの数々をご紹介したいのですが/著作権の関係上 誌上でお見せすることができないのです 残念!]]/【156】
と、再訪した主人公たちを驚かせているのであるが、この「著作権の関係上」と云う断りが、この辺りが現実の出来事であったと窺わせるのである。(以下続稿)