瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小池壮彦『怪談 FINAL EDITION』(18)

・第十七話孤独死(8)
 場所について、正確な位置を割り出そうなどとは思っていない。解体前の住宅地図を見れば見付けられるだろうけれども、これ以上踏み込もうとは思わない。但し、解体されてから今年で13年になり今や何の痕跡も残っていないだろうから、当時の記事の自己規制に従って、記事本文には手を入れないで置く。
 さて、今日*1は雪の舞い散る中、仕事帰りに書類を取りに行く用事があって、ついでに新聞縮刷版を所蔵する別の図書館に立ち寄った。ある事件について知らんと欲するとき、1紙だけ見付けて安心してしまう人がいるが、一通り見得る限りの新聞を見るべきである。前回見た2chスレッド「【社会】「気付かれないまま」約20年前の白骨遺体、解体アパートで発見−東京」に拠れば、(読売新聞)の他に、時事通信共同通信からもネット配信されていた。他紙にも出たろうと思う。但し「東京新聞」は縮刷版を出していないからマイクロフィルムで閲覧するしかなく、俄に確認出来ない。その点、縮刷版が出ている全国紙は、各市区の中央図書館に行けば閲覧出来る。
 次の2紙には出ていなかった。
・「日本経済新聞縮刷版」6月号(第56巻 第6号・2004年7月20日印刷・2004年7月25日発行・日本経済新聞社・定価7,300円・1836+87頁)
・「毎日新聞縮刷版」平成16年6月号(第五十五巻第六号・通巻六五四号・二〇〇四年七月二十五日発行・毎日新聞社・定価五五二四円・48+1184頁)
 しかし「朝日新聞」には、社会面ではなく地域面に出ていた。
・「朝日新聞縮刷版」No.996(平成十六年六月号・通巻996号・2004年7月20日発行・朝日新聞社・定価五五二四円・【56】+1652頁)
 42453号(2004年(平成16年)6月10日 木曜日)の朝刊は縮刷版481〜520頁の全40頁。この記事は縮刷版515頁【東 京】面、上欄外、横組みで「35 [ 東  京 ] 都心 14版」とあって以下日付。8〜9段め、8段めは「月齢 22.9」の月の図の、9段めは広告の右に位置している。
 見出しは大きく2行「解体間際建物に死後20年の遺体」、続いて、

    池袋のアパート
 豊島区池袋4丁目の解/体間際のアパートから、/白骨化した男性の遺体が/見つかった。池袋署によ/ると、死後約20年がたっ/ていた。アパートは管理/会社が倒産した約20年前/から放置されていたらし/く、同署は、男性が空き/部屋に住みついた後、病【8段め】死したとみている。
 アパートはJR池袋駅/から北西約1㌔*2の住宅街/にある築30年余の木造2/階建て、遺体は6月1/日、取り壊しのため、部/屋に入った解体業者が見/つけた。パジャマ姿で布/団に横たわっていた。そ/ばには84年2月20日付の/新聞があった。
 室内にあった履歴書に/よると、男性は昭和2年/生まれで関東地方の出/身。男性の知人は「借金/に追われていたので、身/を隠すように暮らしてい/たのではないか」と同署/に話していたという。

とある。2月5日付(14)に註の形で書き添えて置いたように、やはりこの男性は住人ではなく、住人の退去後、鍵の掛かっていなかった《空き部屋》に入り込んで、パジャマ姿*3というから確かに《住みつい》ていたらしい。日中《履歴書》を持って求職活動している間、部屋を空けていても盗られるような物がなければ開けっ放しでも構わない。電気が使えたのかどうか分からないが、夜は正規の住人が退去に際し置いていった布団で寒さを凌げれば十分であったろう。もちろん、自分がいる間は「読売新聞」にあったように「施錠」していたわけだ。それから、正規の住人でなく《借金に追われていた》とすれば新聞を取っていたとは思えないから、2月20日付の新聞があったことで20〜21日の間に歿したとは決められないようだ。――「読売新聞」朝刊や時事通信配信の記事と突き合わせることで、より状況が明確になった。《 》が「朝日新聞」により初めて分かった内容である。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 初め『異界の扉』及び本書の「読売新聞」の引用を見て、どうしてここが水野やよいに教えられたアパートだと小池氏はすぐに分かったのか、2月4日付(13)の【2月6日追記】に述べたように、疑問に思っていた。――社会面ではなく地域面に、この「朝日新聞」の記事のような、どちらかと云うと軽い、奇妙な話題と云う扱いで載ったのだろうと思っていたからである。しかしながら、2月8日付(16)及び2月9日付(17)に引いたように「読売新聞」はネット配信・朝刊ともにアパート名を報じていたので、小池氏が現地を見た(『異界の扉』)か、話に聞いただけ(本書)なのか、いづれにせよ記事を読んですぐに分かったのである*4。(以下続稿)

*1:この記事を執筆したのは昨日なので、この「今日」は2月9日。改めるのが面倒なのでそのままにして置く。

*2:原文は右上に「キ」左下に「ロ」。

*3:「読売新聞」朝刊には「寝間着姿」。

*4:但し、水野氏が窓から人が覗いていた(ように見えた)とする2階の部屋が203号室かどうかは分からない。別の《空き部屋》に入り込んでいた者が、別にあったかも知れないではないか。――男性会社員(38)が見た、明かりが付いた部屋は「読売新聞」記者の取材時に解体工事がストップしていて、部屋が特定出来たとしたら、間違いはあるまいが。