瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

松本清張『砂の器』(1)

 本書については2016年5月22日付「松本清張『鬼畜』(11)」に触れたことがある。そして2011年9月12日付「美内すずえ『ガラスの仮面』(7)」が実質的に(1)と云って良い内容なのだけれども、一応単独記事としてはこれが初めてである。
野村芳太郎監督『砂の器 昭和49年(1974)10月19日公開。

砂の器 [VHS]

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砂の器 [DVD]

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砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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砂の器 デジタルリマスター2005 [Blu-ray]

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<あの頃映画> 砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]

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サウンドトラック
砂の器 サウンドトラックより ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」

砂の器 サウンドトラックより ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」

「砂の器」~コンプリートサウンドトラック盤~野村芳太郎の世界

「砂の器」~コンプリートサウンドトラック盤~野村芳太郎の世界

あの頃映画サントラシリーズ 砂の器 映画オリジナル音楽集

あの頃映画サントラシリーズ 砂の器 映画オリジナル音楽集

・パンフレット
・ちらし
【映画チラシ】砂の器 デジタルリマスター版

【映画チラシ】砂の器 デジタルリマスター版

・ポスター
映画ポスター 丹波哲郎 加藤剛「砂の器」

映画ポスター 丹波哲郎 加藤剛「砂の器」

 一応断っておくと、デジタルリマスター版は「デジタルリマスター2005 砂の器」と云うタイトルで劇場公開されており*1、DVD(DA-9767)のパッケージにも、

作品データ砂の器 デジタルリマスター版 2005年日本映画 劇場公開日2005年6月18日

とあって、松竹としては元版とは別の作品扱いらしく、元版のデータが全く示されていない。特典映像は「特報」のみであるが、これも「日本初/デジタル リマスター」版の特報であって、元版公開時のものではない。
 犯行直前、犯人と思われる男と被害者が蒲田のバア「ろん」で話題にしていた「カメダ」からの連想で、今西栄太郎警部補(丹波哲郎)と吉村巡査(森田健作)が羽後亀田に行く場面、帰りの急行で何故か和賀英良(加藤剛)と乗り合わせる辺りは、私はどうも作為っぽくて良くないと思っている。
 その後の、今西刑事が1人で亀嵩を訪ねる辺り(41:07〜52:28)が好みである。「特急「まつかぜ」で山陰路に入る」と文字が入って(41:09〜14)、続いて鳥取駅で発車間際にホームに降りて新聞を買った(41:15〜24)今西刑事は、進行方向右側のボックスシートの窓際に、進行方向を向いて座って、発車後(発車のシーンはない)しばらく線路際に木が植わりその向こうに耕作地の広がる窓外を眺めている(41:24〜30)のだが、ふとさっき買った新聞を思い出したように手にして読もうとするときに丁度通過駅に差し掛かる(41:30〜36)。新聞を読む今西を覗き込むようにカメラが切り替わる(41:37〜45)と、僅かに写る窓外は緑の草地で既に駅を通過している。さらに新聞を読む今西刑事の顔を見上げるようにカメラが切り替わると、窓の外は緑の丘陵地になって、線路際の木々に丘が隠れ、そして建物が写ると(41:45〜48)今度は今西刑事の見ている新聞記事(41:48〜54)がアップになる。文化面らしく、右に「作家の道」と題する随想らしき文章、そして紙面の中央であろうか、囲みの「音楽」欄に、「現代音楽/人と思想」と云う連載記事(執筆者は記者ではなく、連載見出しの下に「杉崎■■*2」と大きく入る)があって、「新進作曲家 和 賀 英 良/新曲「宿命」に挑む」とあり、記事本文の中に大きく「現代の孤独から/  離脱への出発 」と内容を纏めてある。左上に作曲している和賀氏の写真。まぁ一度会っているからこの記事が目に付いたと云う理屈にはなるのだけれども。――次にカメラが新聞を読む今西刑事の顔を見上げるように切り替わると窓外は海である(41:54〜42:03)。……
 私はどうも、この通過した駅が気になったのである。何と云う駅か分からないか、そんな気分になって、確かめて見ることにした。――進行方向右側、方角で云うと西へ向かう列車の北側のホーム(上りホーム)が写るのだが、まづ、紺地に平仮名で白く駅名を表示した金属板を張った木柱が写る(41:31〜32)。上は切れていて下に3文字あるのが分かる程度だが、うち2文字めは「…■つ■」と読め、車窓から去っていくところで上にもう1文字はあることが分かる。すなわち「■■つ■」である。次いで白いコンクリート(?)柱に同じ金属板の表示が張ってあるのが写る(41:32〜33)が、今度は下3文字が「…えつね」と読めそうである。それから金属板のないコンクリート柱が1本写ると、と、ここで若い女性の後ろ姿が写る(41:34〜35)。背は高くなく、年は20歳くらいであろうか。白っぽい、膝まであるスカートで、上も同じ色だからワンピースなのか、黒髪を首の後ろで結わえて、肩胛骨の間に少し癖のある髪先がウェーブする。線路から離れて、背を向けて立っている。日差しが強いのを避けるつもりもあろうか。半袖で、膝の前に白い手提げを両手で提げているようである。……こんなに気にする必要もあるまいが、駅名のチェックのために見入っているうちに、この女性についても見入ってしまった。派手ではなく清楚な感じで、夏の日中、田舎の駅のホームにただ1人、しかも後ろ向きの立ち姿と云うのが、美人らしく見えてしまうのである。それはともかく、女性の5mほど先に白く塗装した2本足の木製の駅名表示板が写る(41:34〜35)が白が反射するせいか文字ははっきり読めない。しかし、これだけだと判読不能だが、ここまでの知識で「■■つね」らしく読めてしまう。この板の脇に、やはり「…えつね」の金属板が張ってある木柱が写る。さらに同様の「■えつね」と読める金属板を張った木柱が写り(41:35〜36)、最後(41:36)に薄汚れた木造の待合所が写る。戸も窓もなく(屋根は写っていない)作りつけた厚い木板を渡した椅子に途中、等間隔で柱が2本通してある。
 先年発売されたブルーレイだと、もっと鮮明に確認出来るであろうか。
 さて、山陰本線鳥取からの下りで「■えつね」駅、ここまで分かって検索してみるに、鳥取駅から1駅めが湖山駅、現在次に鳥取大学前駅があるが当時は開業前で、2駅めが末恒駅である。駅名表示板は「すえつね」で間違いないであろう。そうするとあの女性は、鳥取に出る上りの普通列車を待っていたのである。そして、私は、昭和40年代の地方在住者の日常はどんなだったろうと、少し考えてみたりするのである。
 とにかく、国鉄山陰本線末恒駅が映画「砂の器」に写っていたことには、他に注意した人もなさそうだからこうして取り上げて、当時の写真や現状との比較について、もし地元で資料を持っている人があれば、その人の探求に任せようと思うのである。(以下続稿)

*1:家人と仕事の帰りに待ち合わせて見に行った。これが初見で、それ以前に父からかなり詳細に粗筋を聞かされたことがあった。

*2:名が読みづらいが「重雄」か。