初めに断って置くと、私は吉野朔実の漫画を読んだこともなければ、ここに取り上げた書評漫画『吉野朔実劇場』を愛読していた訳でもない。そもそも「夏目漱石『こゝろ』の文庫本(19)」と題して、集英社文庫『こころ』の吉野氏の装画を取り上げるつもりだったのだが、その記述のある『吉野朔実劇場』について書いているうちに長くなってしまったので、分割して*1改題したのである。――当ブログの記事は妙に思い入れがあるものと、何の思い入れもなくただ確認のためだけに書いているものと、極端に分かれているように思うが、これは今のところ、後者である。
* * * * * * * * * *
集英社文庫の夏目漱石作品のカバーは、当初、全て漫画家吉野朔実(1959.2.19〜2016.4.20)の装画だった。
私は浪人時代、殆どそのために大学受験に失敗したと云っても過言ではない英語を克服するために、英語専門の予備校に通っていた。そこで昭和30年代の、余計なことが書いていない中学生用の文法教科書で文法を一から叩き込んで(単語は赤尾の英単語で叩き込んだ)、今でも英語は苦手だが、しかし高校時代までの箸にも棒にも掛からぬ状態とは違って、辞書を使えばそこそこ意味は取れる。文法が抜けていないからである。――当時は全く訳も分からず押し付けられたものを渋々やっていただけだったが、その後、英語を殆ど使わぬ生活をしているのに、まだ文法が抜けずにいることを実感することが時々あって、今はなき件の予備校に一再ならず感謝している。
それはともかく、その帰りに、予備校の近所の、これも今はなき大型書店(移転縮小して存続はしている)に寄って、階段の踊り場で無料配布されていた月刊の横本「新刊ニュース」を集めていた。大竹新助(1916.7.8〜1997.7.17)の連載を見るのが楽しみだった。ついでに「岩波書店の新刊」「これから出る本」も集めていた。いや、これらの蒐集は高校時代まで遡る。「図書」も無料配布されていたが、父が私が物心付いた頃には既に定期購読していて家にあったので、もらわなかった。文庫の夏のフェアなどの小冊子も、平成初年のものは相当数集めた。他にも駅で配布していた「水道ニュース」と「東京都の下水道」も集めていた。表紙の風景写真が綺麗だったからだ。東京に出て来て高校時代に親しんだ、水源地の清涼な光景に接することが出来なくなって、せめて写真くらい眺めて置こうと思ったのである。
それはともかく、今は全くと云って良いくらい本を買わない私だが*2、学部生及び修士の院生当時は、新刊情報を逸早く入手していた。まだネットも普及しておらず、携帯電話なぞ誰も持っていなかった。しかし、書評誌のようなものには手を伸ばさなかった。無料のパンフレットは毎月せっせと集めても、雑誌になるとかさばると思ったのである。
だから吉野氏が「吉野朔実劇場」と云う書評漫画を連載していた「本の雑誌」も手にしたことがない。
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カバー背表紙、最上部にQRコード、以下ゴシック体で小さく角川文庫12353「|よ|20-1|Y495|」角川文庫13350「|よ|20-2|Y514」とありゴシック体太字で著者名、1字分空けて○で囲った●、半字分空けて明朝体太字で標題、最下部にゴシック体で「角川文庫 |■」。(以下続稿)
*1:【7月8日追記】7月8日付「夏目漱石『こゝろ』の文庫本(19)」として投稿。
*2:今年買った本は上野顕太郎『夜の眼は千でございます』くらいか。