瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

山岸凉子「ひいなの埋葬」(9)

 昨日の続き。
山岸凉子スペシャルセレクションIX『鬼子母神』(9)
 Victoria女王に由来する血友病は第「IV」世代で絶えたようだと書きましたが、女系で保因者が続いている可能性はあります。子孫の男児血友病患者が出ない限り、血友病の遺伝子が継承されているのか、明確には分かりません。そして、男児血友病を発症しなかったとしても、その姉妹が保因者である可能性はあるのです。
 それはともかく、9月3日付(6)に続く、梨本家が血友病の家系になった理由についてのシズオの説明を見て置きましょう。383頁2コマめ〜384頁、

シズオ:「ぼくのかあさまはね ぼくを生むとすぐ亡くなったんだおばあさまはとっさに うまれたぼくを女として発表したこれ以上梨本家から男の死亡者を出したくなかったのさ/世の中ばかじゃないからね梨本家に悪い血が流れてるとはぜったいにいわせたくなかったのさ/誇り高き皇族の血をひく梨本家にねふっふふ このひな人形を梨本家へもってきたその人が血友病もいっしょにもってきたってのにさ【383】誇りの象徴でもなんでもない 呪われた血筋の象徴でしかないんだ/このひな人形は‥‥」


 梨本家に血友病がもたらされたのは、8月23日付(3)で見た、孝明「天皇のいとこ」の「姫君」の「降嫁」によってでした。この姫君【I】が明治天皇と同じ世代として、以降女系で相続して、弥生の曾祖父が入り婿となったのは孫娘【III】になります。その娘【IV】が「おばあさま」で、その娘【V】は、第一子の静音ことシズオ【VI】を産んでまもなく死亡したため、たった1人の子孫となってしまったシズオ【VI】の子孫を何とか残そうとするのですが、正直、男児シズオを静音という「女として発表した」ことに、どれほどの意味があるのか、よく分かりません。女系家族だから【V】が死亡しても、遺された子供が女児【VI】であってみれば、梨本家では「育たない」ことになっている男児が遺されるよりは梨本家の存続に期待が持てそうだと、親類縁者に思い込ませる効果はあった訳です。しかし、実際には女児ではなく男児で、かつ血友病患者だった訳ですから、こんなことをしたところで結局は梨本家は女系でも子孫が続かなかった、と思われる結果に終わる可能性が濃厚でした。以下女系6代(実際には5代+1)の推定系図を示して置きましょう。生歿年は推定です。
【I】女(1850〜 )
【II】女(1870〜 )
【III】女(1890〜 )
【IV】女(1911〜1976.3.3)
【V】女(1934〜1959)
【VI】男(1959〜1976.3.3)
 それにしても【Ⅰ】から【V】まで5世代にわたって保因者が続いた、と云うのは、確かに恐るべき女系家族と云う気がします。
 ところで、皇室に血友病があったとは聞いたことがありませんし、これは Victoria女王に起因するヨーロッパ王侯の血友病(王家の病)から発想して、高貴な血に遺伝病を絡めてみたまでなのでしょう。【I】は Victoria女王と同じく、突然変異で保因者になったのか、或いは孝明「天皇のいとこ」に嫁いだ女性が保因者だったのでしょう*1。以来【II】から【V】の4代にわたって、保因者の女性によって血筋が続き、その間、男児が生まれても5歳までに夭折していたのでした。(以下続稿)

*1:他の可能性もあります。