瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(16)

鈴木則文監督『ドカベン』(14)
 昨日の続き。
 花園学院との団体戦(文庫版②50〜63頁)で、副将を務めた山田は、相手の副将・麻島を持ち上げてしまう。原作では丹下が「投げろ山田!!」と声を掛けるが山田は動かない。丹下は「山田 どうして投げぬ/そのまま投げれば一本だぞ」と焦って声を掛けるがやはり動かない。主将・木下も「山田 ど……どうして」と戸惑うのだが、伊賀谷師範代が(彼は待っているのだ 審判が一本と宣告するのを待っているんだ すでに麻島は死に体だ あのまま投げれば大ケガだ……だ だから宣告を待っているんだ)と気付いて介入して「持ち上げ一本!! 山田の勝ち!!」と判定するのだが、映画には伊賀谷師範代が登場しないので持ち上げたままである。
 岩鬼が会場に駆け込んで来るタイミングは原作ではその直後、丹下を主将として(岩鬼が間に合えば岩鬼に交替するつもりで)届け出てあったため、丹下が出場しようとするところに「まったまった」と言って現れて花園の主将・影丸と対戦するのだが、映画では丹下は「複雑怪奇骨折」後、登場しないので登録メンバーはちょうど5人、岩鬼が間に合わなければ不戦敗と云う展開になっている。
 この展開は原作の、山田や岩鬼らが鷹丘中野球部に入部して後*1、小林投手率いる東郷学園との試合(文庫版⑤283頁〜⑥267頁)で、死球を受けて額が割れた岩鬼の応急的な縫合が終わるまで、十数回ファウルを続けて粘った場面(文庫版⑥97〜140頁)の転用であろう。鷹丘中野球部も9人しかいないため、岩鬼が鷹丘中の攻撃終了までに回復せず、守備に付けなければそのまま不戦敗になるところであった。
 映画ではここも、踏ん張りすぎて山田の両足が畳にめり込むと云う漫画チックな描写になっている。そして試合時間が切れるまで、持ち上げたまま粘るのである。

  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 さて、ここで、影丸岩鬼の対決、そして賀間と山田の対決について話を進めるべきなのだけれども、この辺り、記憶に頼っては迂闊なことを書くだけになりそうなので、しばらく先のことになりそうだが映画を再見して比較した上で記事にすることとする。
 そこでついでだが、映画にはない東郷学園対鷹丘中の試合、3回裏2死、岩鬼の負傷を受けて山田がファウルで粘る場面、山田は何球粘ったのかが実は混乱しているようなので、検証して見よう。
 小林投手の投球が何球目かは(中学野球の一回戦なのに何故か)ラジオ中継されており、その実況に拠る。頁・コマは判定が審判もしくは実況によって述べられたコマを示した。
  1 (文庫版⑥105頁2コマめ)「ストライクワン!!」
 第二球(文庫版⑥106頁1コマめ)「ストライクツー!!」
 第三球(文庫版⑥107頁5コマめ)「ボール」
  4 (文庫版⑥109頁5コマめ)「ファウルファウル」
  5 (文庫版⑥110頁3コマめ)「ボール」
  6 (文庫版⑥111頁1コマめ)「ファウルファウル」
  7 (文庫版⑥112頁5コマめ)「ボール!! ツーストライクスリーボール」
  8 (文庫版⑥114頁4コマめ) ファウル
  9 (文庫版⑥116頁1コマめ)「ファウルです ファウルです」
 第10球(文庫版⑥119頁1コマめ)「ファウル!!」
 12球目(文庫版⑥120頁4コマめ)「ファウル またもファウル」
 第16球(文庫版⑥121頁3コマめ) 不明(ファウル)
 20球 (文庫版⑥122頁1コマめ)「またまたファウルです」
 21球目(文庫版⑥127頁1コマめ)「またまたファウルです」
 第22球(文庫版⑥129頁1コマめ)「ファウルです」
 22球目(文庫版⑥131頁3コマめ)「ファウルです」
 すなわち第22球と22球目がダブっている。そして最後、小林の大暴投にジャンプして当てるも、鷹丘中ベンチ前で小林にスライディングキャッチされてしまうのだが、その直後の実況(文庫版⑥138頁4コマめ)が「ついに22球目にしてついにチェンジです」と言う。しかしこれは24球目のはずだし*2「ついに」はどちらか1つで良いだろう。(以下続稿)

*1:11月15日追記】以下全て「鷹岡」となっていたのを「鷹丘」に訂正した。

*2:もう気付いている人もいると思うが、初出から30年以上を経て増刷された文庫版でもそのままになっていたので念のため指摘して置く。2016年10月6日付「阿知波五郎「墓」(3)」に取り上げた、作品の根幹に関わる、「加筆訂正を要」するような誤りではない。ただ3つの「22」を「22、23、24」に改めれば良いだけで、訂正したことにより2013年4月9日付「松本清張「西郷札」(3)」にて訴えたような問題は生じないはずである。