・大林宣彦監督『瞳の中の訪問者』(2)
昨日の続き。
9月15日に新文芸坐で見た。目的は本作よりも『HOUSE/ハウス』の方で、私は常光徹等の『学校の怪談』がブームになる以前から学校の怪談に注目して聞書きなどをしており、小学校入学前の映画なので当時見る機会もなく知識もなかったのだが、数年前に文字情報で『HOUSE/ハウス』の内容を知って、どうやら学校の怪談の、荒唐無稽なまでに血腥い話には、この映画のイメージがありそうだ、と思って、一度見て置きたいと思っていたのである*1。
それはともかく、本作も、恥ずかしくなるような臭い芝居や滑っている滑稽な演出なども含めて、面白く見た。
私は映画は原作を忠実に映像化しなくても良いと思っている。文字では(描写できないから)描写しなくても済んでいた部分を、映像では補う必要が出て来る。逆に映像には(描写できないから)描写しなくても済んでいた部分を、文字では描き込んで置く必要があったりする。長篇小説を映像化する場合、TVドラマで数十回・数十時間の連続ドラマにすれば、かなり忠実に映像化することも可能であろうが、なかなかそんなに見ていられない*2。映画では相当に刈り込む必要が出て来る。短篇小説の場合は、背景を掘り下げたり、別の要素を足したり、複数の話を繋げたりして膨らませることになる。
本作もその口で、原作は「春一番」と云う19頁の短篇漫画である。
前回述べたように、父が手塚ファンで単行本を買っていたので、読んだはずなのだが「春一番」は覚えていない*3。そこで、秋田文庫版を借りて、読んでみた。
・『BLACK JACK①』 平成5年8月20日 初版発行・平成7年10月15日 27版発行・定価563円・290頁
Black Jack―The best 12stories by Osamu Tezuka (1) (秋田文庫)
- 作者: 手塚治虫
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 1993/07/01
- メディア: 文庫
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・平成5年8月20日 初版発行・平成27年8月30日 120版発行・定価562円*5
本作はかなり設定を変えており、原作のファンからは(臭い芝居や変な演出も相俟って)頗る評判が悪いようだ。
けれども私の判断基準は、話の辻褄が合っているかどうか、と云うところにあるので*6、むしろ原作よりも本作の方が良く出来ているのではないか、と思えたのである。(以下続稿)