昨日の続き。
・鈴木則文監督『ドカベン』(32)『東映ゲリラ戦記』
鈴木則文『東映ゲリラ戦記』の意図については、「ちくま」連載の最初に特に説明しなかったようだし、単行本にする際に「まえがき」を加えて説明したりもしていない。90頁15行め〜91頁2行めに、
このエッセイは、映画界の大きな流れや東映映画正史とはほとんど無縁の、京都撮影所/に誕生した〈東映ポルノ路線〉という小さなゲリラ組織(それはプロデューサー天尾完次/と監督鈴木則文の二人のコラボレーションに過ぎないが)についてのささやかな記録と回/想であるが……それだけでは済まなくなってきたのが、この年の東映をめぐる出来事であ【90】る。
この年、一九七二年――。
とあって、当初の意図を上回る(?)内容に及ぶことになった際に、初めて説明されている。
そして最終章(205〜229頁)の「人物走馬灯」の冒頭部に、連載のきっかけと意図について、より詳しい説明がある。すなわち、205頁4〜9行め、
筑摩書房の「ちくま」編集長青木真次氏から一通の書名を受け取ったのは、二〇一〇年/の初夏の頃である。
池玲子、杉本美樹等のいわゆるポルノ女優が活躍していた頃の一九七〇年代、不良性感/度を掲げて量産していた「東映ポルノ路線」のことを、女優の人物論とお遊びで出演した/と思われる田中小実昌、団鬼六等の小説家の人物評を交えて書いてくれないか。あの七〇/年代八〇年代のサブ・カルチャー裏面史として面白いから――という依頼であった。
これを鈴木氏は断るのだが、その後青木氏と交遊を重ねるうち、206頁4〜5行め「一/年後の夏」、206頁7〜11行め、
‥‥、去年依頼されたエッセイのことを思い出し……ふと、書いてみよ/うかという気になった。
青木氏の依頼の眼目の人物論は無理だけれど、東映社内から異端視され、世評も発表当/時は低かったいわば「ゲリラ路線」であった東映ポルノ路線について誰かが記録しておく/必要があるという思いが脳裏をよぎったのだ。
と云うことになり、6頁(頁付なし)の下部中央に明朝体太字で小さく、1行め「カバー写真 『女番長*1』1973年公開©東映」とあって1行分空けて2〜3行め、
本書は「ちくま」2011年10月号から2013年7月号に/連載されました。
とあって、この間毎号掲載されたとすれば22回になるが19章しかないので、初出誌を見なければ各章が何年何月号に発表されたのか、確定出来ない。
7〜129頁「前編 京都ポルノ戦線」が11章、131〜194頁「後編 帝都進攻作戦」が6章、195〜229頁「エピローグ」が2章、ここまで頁付があり、次いで横組みの2頁見開き、1頁めは「鈴木則文監督作品リスト」、2頁めは「著者紹介」、その裏が奥付である。
本作は後編の3章め(通しだと14章め)に、152〜161頁「漫画原作をストレートに「実写再現」しようとする男の深層について 『ドカベン』」として取り上げられている。(以下続稿)
*1:ルビ「スケバン」。