瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(46)

鈴木則文監督『ドカベン』(36)『東映ゲリラ戦記』(5)
 昨日の続きで、キャストに関する鈴木氏の意見を見て置こう。159頁12〜18行め、

 一般公募者の中からオーディションで選んだ山田太郎役の橋本三智弘、岩鬼正美役の高/品正広、長島徹役の永島敏行の三人は、まるで水島漫画そっくりそのままによく似ていて、/選考責任者である私は「これでこの映画はいける」と確信した。
 原作漫画の絵からとび出して来て大活躍する本格的〈実写映像〉の漫画世界を描こうと/決めていたからである。
 殿馬役の川谷拓三も夏子役のマッハ文朱もイメージにぴったしのキャスティングであっ/た。


 ここは評価が分かれるところであろう。
 岩鬼は他に望めないくらい似せてあると思う。台詞は後で当てたのであろうが、例の葉っぱをずっと銜えたままである。特に銜えたまま食事をするのはどんな按配だったのか、出来れば高品氏に確かめたい、――いや、私にはそんなことは出来ないので、……誰か、高品氏に確かめて欲しいところだ。
 山田は8月24日付(01)にも指摘したように横浜学院高校の捕手谷津吾朗に似ていると思う。ただ、原作通り、縦には左程大きくないが横幅がもっとあると云う体型は、探すのが難しいようにも思う。原作の長島は、長島茂雄をハンサムにしたような顔立ちで、正直永島氏には似ていないが、例えば、宮藤官九郎脚本のTVドラマ「タイガー&ドラゴン」で、岡田准一が落語の天才と呼ばれていた、と云うのに説得力を感じなかった(あのドラマの最大の弱点)のに比べれば、永島氏は高校で野球部員、大学では準硬式野球部員だっただけあって、背も高いし野球の演技は様になっている。
 10月15日付(26)に述べたように映画の冒頭、本当に「原作漫画の絵からとび出」すことになっている*1。尤も、鈴木監督の「確信」も空しく、10月13日付(24)に引いた脚本を担当した掛札昌裕のインタビューにあるように「シリーズ化」が予定されながら「1作目で打ち切りになってしま」ったのであるが、鈴木氏が「いける」と思って取り組んでいることは十分伝わって来るように思う。
 殿馬については、前回検討した「本社宣伝部作成の映画館配布文」に、158頁15〜16行め、

‥‥、ヒョウヒョウとしてつかみどころがなくチンケな風采だが、外見に似/合わず大変な音楽的才能を持つ異色キャラクター、トンマこと殿馬一人。‥‥

と紹介されているが、原作の殿馬には似ていない。しかし、雰囲気は出していると思う。
 夏子については9月21日付(10)に触れたように、マッハ文朱(174cm)では女子学生役の中で図抜けて高いのだが、原作では、背は山田よりも高いが、当初、いつも並んでいた朝日奈アッコよりは10cmは低いように見える。朝日奈アッコは170cmはありそうだ(文庫版①48頁)。ぽっちゃり体型で、小さくはないが160cmくらいであろうか。容姿は癒し系と云えば云えなくもないが美人ではない。見た目だけでなく性格がかなり異なっており、これも映画は原作とは別の雰囲気を出していると云うべきである。
 ちなみに10月7日付(18)の注に夏子がキャプテンになっていることを指摘したが、これは記憶に拠って書いたので正確ではなかった。文庫版①149頁、薔薇の花束を持ってソフトボール部の部室の前で待っていた岩鬼*2が、6コマめ「こ…今度の大会に しゅ 主将になられたそうで お…おめでとうさんだす」と言うので、所謂、部長・副部長と云う役職とは異なるニュアンスのようにも感じられる。(以下続稿)

*1:今日、通り掛かってこの「朝日奈書店」を間近に見たが、鬼子母神の方はもう暗くなっていたために立ち入れなかった。いづれ機会を得て武芳稲荷など確認したい。

*2:この辺りが10月20日付(30)の、映画での殿馬初登場のシーンに利用されている。