瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

水島新司『ドカベン』(52)

鈴木則文監督『ドカベン』(38)『漫画+映画!』(2)
 昨日の続き。
 55〜088頁、高鳥都(1980生)執筆の「第3章/映画と劇画の70年代/エロスと血しぶきと衝動の時代」は、15の節に分かれているが、一番長い節が9節め、072頁8行め〜075頁(13行め)「監督・脚本・原作……最も劇画にコミットした男・鈴木則文」である。
 取り上げられている映画は以下の3作で、原作や当時の状況、併映作品などについて触れている。
・『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』昭和48年(1973)2月17日公開

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・『聖獣学園』昭和49年(1974)2月16日公開
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・『恐怖女子高校 女暴力教室』昭和47年(1972)9月29日公開
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<東映55キャンペーン第13弾>恐怖女子高校 女暴力教室 [DVD]

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 そして13節め、082〜084頁4行め「劇画・漫画原作ブームの終焉」に、082頁13行め〜083頁1行め、

 1977年、「週刊少年ジャンプ集英社の発行部数が200万部を突破したこの年、【082】東映によって同誌の人気作がいくつも映画化され、新たなムーブメントが巻き起こる。‥/‥

として、4作品を取り上げる。083頁4行め〜13行め、

 武論尊平松伸二原作の『ドーベルマン刑事(監督:深作欣二が相変わらずの原作無/視で作られる一方、鈴木則文は『ドカベン』を演出。菅原文太の劇画的喜劇性を引き出し/「トラック野郎」シリーズを当てた鈴木は、水島新司の原作そのまんま精神でリスペクト/たっぷりのコメディに仕上げ、のちに“マンガ映画の父”と称される礎となった。その見/世物精神は、2000年代以降のマンガ原作映画に引き継がれている。
 ドカベン岩鬼もそっくり。愚直に、かつ巧妙に原作をなぞりながら実写としてのパワ/ーをたたえ、しかしながらこれ一本きり……柔道部編のみでおしまい。ジャンプ路線は池/沢さとし(現・池沢早人師原作の『サーキットの狼(監督:山口和彦)山止たつひこ(現・秋本治原作の『こちら葛飾区亀有公園前派出所(監督:山口和彦で打ち止め、そのほか/合計8本の実写版が公開されたが、おおむね低調な興行に終わった。


 本作が「ジャンプ路線」に含めて記述されているが「週刊少年ジャンプ」連載の他の3本と違って「週刊少年チャンピオン」連載である。なお「合計8本」と云うのは漫画「実写版」映画全体を指しているらしいがWikipedia「アニメ・漫画の実写映画化作品一覧」の「1977年」条を見るに合計15本が挙がっており、本書には別に一覧データが資料として示されている訳でないので、食い違いの原因が分からない。
 それはともかく、「原作」の「精神」を「リスペクト」し「そのまんま」活かしつつ「巧妙に原作をなぞりながら実写としてのパワーをたたえ」と云う評価には、私も賛成したい。原作との乖離を指摘する声もあるが、既にして原作がかなり矛盾に満ちているのであり、掛札氏の脚本はややこしく矛盾した設定を合理化もしくは整理し、少々排除し過ぎた嫌いもないではないが、それなりに巧妙にまとめ上げていると思うのである。(以下続稿)