・鈴木則文監督『ドカベン』(38)『漫画+映画!』(2)
昨日の続き。
55〜088頁、高鳥都(1980生)執筆の「第3章/映画と劇画の70年代/エロスと血しぶきと衝動の時代」は、15の節に分かれているが、一番長い節が9節め、072頁8行め〜075頁(13行め)「監督・脚本・原作……最も劇画にコミットした男・鈴木則文」である。
取り上げられている映画は以下の3作で、原作や当時の状況、併映作品などについて触れている。
・『不良姐御伝 猪の鹿お蝶』昭和48年(1973)2月17日公開
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1977年、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の発行部数が200万部を突破したこの年、【082】東映によって同誌の人気作がいくつも映画化され、新たなムーブメントが巻き起こる。‥/‥
として、4作品を取り上げる。083頁4行め〜13行め、
武論尊・平松伸二原作の『ドーベルマン刑事』(監督:深作欣二)が相変わらずの原作無/視で作られる一方、鈴木則文は『ドカベン』を演出。菅原文太の劇画的喜劇性を引き出し/「トラック野郎」シリーズを当てた鈴木は、水島新司の原作そのまんま精神でリスペクト/たっぷりのコメディに仕上げ、のちに“マンガ映画の父”と称される礎となった。その見/世物精神は、2000年代以降のマンガ原作映画に引き継がれている。
ドカベンも岩鬼もそっくり。愚直に、かつ巧妙に原作をなぞりながら実写としてのパワ/ーをたたえ、しかしながらこれ一本きり……柔道部編のみでおしまい。ジャンプ路線は池/沢さとし(現・池沢早人師)原作の『サーキットの狼』(監督:山口和彦)、山止たつひこ(現・/秋本治)原作の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(監督:山口和彦)で打ち止め、そのほか/合計8本の実写版が公開されたが、おおむね低調な興行に終わった。
本作が「ジャンプ路線」に含めて記述されているが「週刊少年ジャンプ」連載の他の3本と違って「週刊少年チャンピオン」連載である。なお「合計8本」と云うのは漫画「実写版」映画全体を指しているらしいがWikipedia「アニメ・漫画の実写映画化作品一覧」の「1977年」条を見るに合計15本が挙がっており、本書には別に一覧データが資料として示されている訳でないので、食い違いの原因が分からない。
それはともかく、「原作」の「精神」を「リスペクト」し「そのまんま」活かしつつ「巧妙に原作をなぞりながら実写としてのパワーをたたえ」と云う評価には、私も賛成したい。原作との乖離を指摘する声もあるが、既にして原作がかなり矛盾に満ちているのであり、掛札氏の脚本はややこしく矛盾した設定を合理化もしくは整理し、少々排除し過ぎた嫌いもないではないが、それなりに巧妙にまとめ上げていると思うのである。(以下続稿)