瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

手で書かずに変換する(1)

 10月27日付「3人のヤマンバ(1)」に述べた共学高の次に勤務した男子高では、2年生は誰も持ちたがらず宙に浮いていた現代文1クラスだけ担当させられ、生徒に「俺はレンタルビデオ屋のバイトで楽してるのに、先生がこんなに苦労してるのに月の稼ぎが同じだなんて世の中間違ってるよな」と同情され、そこまで分かってるのなら黙って勉強しろ、と思ったものだった。学校の方針で毎週漢字テストをやったのだが、直前に時間を与えても問題集をじっと眺めるだけで書かないのである。私などは手が真っ黒になるまで書いて、それで覚えて頭に浮かばなくても手が動く、と云う按配だから、このじっと見詰める態度が不可解で「書かないと駄目だぞ」と注意すると、例のレンタルビデオ屋の生徒が「でも先生、直前に見て、それで書けるってこと、あるじゃないですか」と真顔で言ったのには、呆れるを通り越して反論する気力も湧かなかった。――稀にそんなことがあったとしても、毎回10点満点で2点や3点しか取ってない君がそんなこと言ったって、全く説得力ないんだけど、と突っ込むのも何だか可哀想で、生徒も可哀想だしこんな突っ込みをする私自身も哀れで、何も言わなかったのである。生徒は私を言い負かしたつもりで得意になっていたかも知れぬが。
 同じ学校では他に1年生の古典を専任教諭2人と3人で分担して担当したのだが、自分が担任している特進クラスだけを担当している学年の国語主任が毎回定期考査を作成して、自分のクラスが7割取れるように作っているらしいのだが、私らの担当するその他大勢のクラスの生徒には難しすぎて、全然点が取れない。欠点続出であった。ところが一方で、他の教科では(具体的には書けないが)国語科よりも酷い試験結果を前に生徒たちがごねたところ、教員側としても成績が恐ろしく低くなるのは問題だから、恐ろしく甘い救済策を実施して、欠点が出ないように細工している、と云うのであった。そうすると今時の生徒の感覚からすると、国語科だけが「狂ってる」と云うことに、当然なる。
 生徒にこんなふうに他教科とのダブルスタンダードを指摘されると(もちろん生徒に知らされない限り、そんなことは一講師の身で知りようがないのだが)私としても言いたくはないのだが、教科主任に物申さざるを得なくなる。――他教科が大甘であるのに対して国語科だけ厳しい。試験問題も彼等の実力を超えているのでもう少し何とかして欲しい。これは既に担任からも外れるくらいのベテランの、もう1人一緒に組んでいる専任教諭も同意してくれたのだが、教科主任の答えは「でも、××先生。うちの学校は全体に甘すぎるから、一つくらい厳しいところがあっても良いと思うんですよ」と、全くの正論ではあったが、要は聞く耳持たぬと云うことであった。
 私は生徒たちに、ごねても無駄だから諦めて勉強しろ、と言ったのだが、土台無理な注文であった。

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12月12日追記】当初、ここに

 男子高だからヤマンバはもう出没しないが、仮に同じ題でぼつぼつ、当り障りのない回想を書き連ねて置く。(以下続稿)

と添えて「3人のヤマンバ(2)」と題して投稿した。10月27日付「3人のヤマンバ(1)」と同時に書きかけていたからである。しかしながら、もうヤマンバは登場しない(その後、実物を見たこともない)のだし、題を変えることにした。