瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

上方落語「三年酒」の原話(2)

 昨日の続きで、東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版の「神道又」の項の残り、538頁上段10〜13行め、

 〔解説〕上方ばなしで、マクラに「由辰」をふること/がある。オネオネの佐助がオネオネと話し、ゴウマンの/幸助のごうまんないい方、ゴツキの源太がけんか腰で坊/主にかけ合うところが聞かせどころ。現桂米朝がやる。


 差当り、次の速記を確認して見た。
・『米朝落語全集 増補改訂版 第四巻』二〇一四年二月二〇日第一版第一刷発行・創元社・317頁・A5判上製本

米朝落語全集 増補改訂版 第四巻

米朝落語全集 増補改訂版 第四巻

 2015年7月11日付「桂米朝『いろはにほへと』(1)」に述べたように旧版も確認したかったのだけれども。ちくま文庫『【上方落語桂米朝コレクション』全8冊には収録されていない。
 増補改訂版の第四巻には五十音順に「算段の平兵衛」から「代書」まで18題を収録する。うち16題は旧版のままであるらしく、152〜174頁「島巡り」と272〜278頁「雪隠の競争」が増補改訂版に於ける増補である。
 25〜42頁「三年酒」は2題めで、25〜40頁が2段組の落語本文、冒頭は2段抜きで2行取りで大きく題、その下に読みを平仮名で添える。前に1行分、後に3行分空白。1段22行、1行25字、台詞は発言者の頭文字を略号に鍵括弧で2行めから1字下げ。39頁は全頁、藤原せいけん(1902〜1993.8.31)による挿画で落ちの場面。40頁は下段14行めまでで、以下の余白、左下に「三年酒」の紙を貼付した酒瓶のカット。41〜42頁は「解説 三年酒」で25頁の題よりはやや小さい。解説本文は6字下げで段組なし、1行43字。
 増補落語事典』改訂新版に云う「由辰」は、28頁下段5行めまでの「マクラ」のうち、25頁下段10行めから28頁上段13行めまでに、この種の、排仏論に基づいた噺が「やりにくい」理由の説明のために演じられている。この『米朝落語全集』では「義竜*1」の字を当てている。増補落語事典』改訂新版450〜456頁 [] の13項のうち5項め、452頁上段16行め〜下段17行め「由 辰(よしたつ)」は、殆ど(452頁上段17行め〜下段16行め)が〔梗概〕である。〔解説〕は下段17行めの1行のみで、話の背景に触れるところはない。すなわち「五代目小勝の得意。「義竜」とも書く。」とあるのみで、かつ、どうも組み直した(と云うか、後半は追加)らしく思われるのである。
 それはともかく、『増補落語事典』改訂新版に載る別称によって2017月12月31日付「宇井無愁の上方落語研究(1)」に挙げた諸書を検索するに、上方落語考』467〜511頁「上方はなし演題目録」及び角川文庫3631『笑辞典落語の根多』559〜612頁「上方落語演題一覧」に「神道又」の演題は見えていた(『落語の根多』の「一覧」は『落語の系譜』に載せたものの再録と思うが今、『落語の系譜』が手許にない)。しかしながら、宇井氏は原話には思い到らなかったようで、本文に取り上げることはなかったようである。(以下続稿)

*1:ルビ「よしたつ」。