映画を見た。――原作からして非常に人気があったらしく、多くの版がある。
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舞台プログラム 湖の琴(芸術座 1974・9月→10月) 作:水上勉 演出:観世栄夫 出演:浜木綿子、嵐芳夫、河原崎国太郎、高田敏江 ほか
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2017年8月28日付「朝日新聞名古屋本社社会部『映画風土記』(1)」に取り上げた現代教養文庫1492『日本シネマ紀行』に出ていたので、何となく借りて見た。
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話の時期であるが、さくが来た日、旦那さんは双郭に縦罫が12行印刷された袋綴じ帳面の、裏側、1行めに1字下げで「大正拾四年四月二拾二日」と明朝体太字で刷ってあり、3〜4行めに「若狭栗柄の在栂尾さくを」5〜6行め「雇う」と毛筆で記入する場面があるのだが「雇ふ」であろう。
そして「大正拾五年三月拾一日」条には、3〜4行め「大原兼吉松宮宇吉共に」5〜6行め「徴兵檢査の通知来たる」とある。奇数の日付なのに何故か裏。「来」の字は(明瞭に写っているが)上半分が殆ど潰れていて不分明。
大原兼吉(田中邦衛、1932.11.23生)は「昔から丁稚奉公も検査まで」と云われる通り、徴兵検査に百瀬家を出たまま戻らない。宇吉は甲種合格の後も百瀬家で働き、入営を嫌って醤油を飲んで体調を崩そうとする*1が、そのまま金沢の聯隊に入営することになる。
その年の夏、京都の長唄の師匠桐屋紋左衛門(二代目中村鴈治郎、1902.2.17〜1983.4.13)が三味線の西山糸の産地を、笛の師匠鳥居まつ枝(山岡久乃、1926.8.27〜1999.2.15)と訪ね、さくを見染めて三味線の内弟子にすると提案する。宇吉と将来を約束していたさくであるが、紋左衛門に下心があることに気付かない、加代や喜太夫ら周囲に勧められるまま、京都に出てしまう。三味線は尺八などと違い子供のうちから仕込まないと物にならないはずで、全く三味線に触ったことのないさくを、素直な気性を見込んで内弟子にしたいとは、不自然である。そこを信用して喜太夫たちも送り出したからには、紋左衛門は余程固い人物と認められていたと云うことになる。いや、そんなことはないので、まつ枝が病弱な奥さんの代わりと目されていたから、さくは平気だと思ったのだろう*2。
そして、宇吉は雪の降る晩に徴兵から戻り、初めてこの事実を伝えられて呆然とするのだが、そこに「部落のぉ皆さんにぃ申し上げます。天皇陛下に於かせられましては、兼ねて葉山御用邸で御病気御療養中のところ、その甲斐なく、今朝午前1時25分、崩御遊ばされました。部落の皆さんに、謹んでお知らせ致します」と、大正天皇の崩御を告げて歩く男の声が響く。
* * * * * * * * * *
映画の内容は、1年間「読売新聞」に連載された小説よりも、すっきり纏まっているようであるが、これについては別に検討することとしたい(しないかも知れない)。(以下続稿)
*1:醤油を飲んで体調を崩す智恵は、2017年5月5日付「スキー修学旅行(2)」に述べたように、私も兵庫県立高校在学中(別に知りたくもないのに)授けられたことがある。
*2:しかし、翌年の6月「村では、さくちゃんが桐屋先生の囲い者に行ったんやと言うてる人もある」と、京都に会いに来た宇吉が口にしている。