瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

上方落語「三年酒」の原話(4)

 さて、なかなか本題に入れないが、1月2日付(2)に取り上げた『米朝落語全集 増補改訂版』第四巻41〜42頁「解説 三年酒」にも、宇井無愁上方落語関係の著作や東大落語会 編『増補落語事典』改訂新版に同じく、この話の典拠について触れるところはない。
 そもそもが滅多に演じられない話で、1月13日付(3)に引いた『米朝ばなし 上方落語地図』にも「この落語は、私が復活したのですが、‥‥」とあり、『米朝落語全集 増補改訂版』の「解説 三年酒」にも、42頁3〜4行め「‥‥、あまり演じる機会の少ないネタですし、まあ完全に滅んで/いたものをなんとか復活させたんですから、‥‥」とある。どうやって復活させたのかの説明はないが、以前にこの話を演じていた噺家についての記述はある。41頁11行め〜42頁1行め、

 おねおねと高慢とこつきの三人を演じ分けるところが一番の難所で、私は桂右之助師から、二/代目桂三木助師のこの件りがどんなにおもしろかったか、どんなに良かったか、特におねおねの*1/佐助が、わけのわかったようなわからぬようなおしゃべりを繰り返している間が、たまらぬおか/しさであったということを聞かせてもらいました。実は私は、昔この二代目三木助師の三年酒の/レコード(おそらく大正時代のもの)を、二枚か三枚続きのうち一枚だけでしたが、聞いたこと/があるのです。それは寺の玄関で案内を請*2うて、和尚が出てきていろいろ応対があり、おねおね/が「実は……」と切り出すあたりまででした。現在、残っているかどうかわかりませんが、なん/とかこのレコードの全篇を聞いてみたいと思っています。


 桂右之助(1903〜1971.3.6)は『上方落語ノート』の口絵に写真が掲載されていたのを見た覚えがある。
 二代目桂三木助(1884.11.27〜1943.12.1)の録音は、SP盤の「動物園」「丁稚芝居(蔵丁稚)」「みかん賣り」「鮑熨斗」の復刻盤CDを聞いたことがあるが、収録時間の制限に合わせて巧く話を纏め、明瞭な語り口で非常に分り易く面白い。
 某巨大動画サイト等には二代目桂三木助の「三年酒」は上がっていない*3。復刻盤CDもないようだ。そこで上旬の土曜日、出身大学の図書館の冬休み明け返却日だったのだが、まだ勤め先までの定期券を買っていなかったので、普段とは別の館に行くことにして、ついでに参考になりそうな本を探して見ることにしたのである。(以下続稿)

*1:ルビ「かつらうのすけ/かつらみきすけ・くだ」。

*2:ルビ「こ」。

*3:桂米朝の「三年酒」は上がっている。