瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

宇井無愁の上方落語研究(3)

角川選書11『日本人の笑い』(2)
 昨日の続きで、六版のカバーについて。
 裏表紙には子持枠(縦16.8cm)が3つある。左の子持枠(横2.2cm)は表紙左側の紹介文と同じ大きさで、漢字はゴシック体、仮名と句読点は明朝体で、

笑いが武器だった時代には、人は敵を作るか憎まれるかする危険を冒さずには、うかつに笑えなかった。……
笑ったために敵にまわす気づかいのない相手に動物があった。動物笑話がそうして生まれた。/つぎに子供、不具者、敗者、つまり弱者を笑った。また誰もが共通にもっている弱点、たとえばセックスを笑い、/焦点の散漫な悪口の交換で笑い、それでも足りなくて、笑うべき架空の人物をさがし求めた。――本文より

とある。中の子持枠は左の子持枠と同じ寸法だが、中に文字はないが、上部に右の子持枠(横4.9cm)から連続して、浮世絵から「[辰]」と題する、背後に大きな碇、その前に青い顔色の爬虫類形の顔立ちの男が龍の身体のように見える籠手・腹巻・臑当を着け、膝は黒と群青色で魚鱗のような模様を刷り出した生地で、どうも龍の真似(?)をしているらしい絵を抜いてカットに使用している。姿勢を低くして右手と両膝を突いており、突き出した左足は左の子持枠の右辺上部に掛かっている。
 右の子持枠の右上、カットの右に「日本人の笑い――宇井無愁」、右下には「角川書店――定価七六〇円 0310-703011-0946(2)」とある。カットの下には2〜8行め、

目次より 日本人の笑いの条件――日本語になった「ユーモア」  ジャパニーズ・スマイル
神々の笑い――日本の神々と祭り 神楽の笑い 門おとないの神 山の神の笑い 祖霊と怨霊
     セックスの笑い――性を笑ってはいけない理由 美女と老人 古代のフリー・セックス
     言霊のたわむれ――シャレのはじまり コトバのアソビと新興
     烏滸びとの系譜――笑いの提供者たち 同朋衆・お伽衆
     笑話の誕生――神話・伝説・昔話・世間話 笑話の条件 ハナシの文芸化
     付録―ベルグソンと江戸小咄

とある。3版のカバーと違って、多少、いや、かなりごてごてしていても、とにかく文字で内容を示して読者を惹きつけようという、装幀なのである。
 折返しには同じ大きさの子持枠(16.8×4.8cm)があり、表紙折返しには、上半分に明朝体太字縦組みで、

死や困難や苦痛や失敗や悲嘆に直面した日本人は、/笑うべからざる時に笑顔をつくる。/死や困難や苦痛や失敗や悲嘆は、/いずれも目にみえない「敵」である。/古代人の感覚では、悪霊や死霊の襲撃にほかならない。/この「敵」に対して現代の日本人も、/無意識に「防禦」の武器を面上に用意して、/本能的に抵抗の姿勢を示すのである。――本文より

とあり、裏表紙折返しには上部1/4ほどに、

宇井無愁*1
明治四二年、大阪に生まれる。/本名、宮本鉱一郎。
松竹関西新派劇作者、/大阪新聞記者を経る。
第一回ユーモア文学賞受賞。
著書に『きつね馬』『上方落語考』/『落語の原話』『落語の系譜』がある。

とあって二重鍵括弧は半角。(以下続稿)

*1:ルビ「う い む しゅう」。