一昨日からの続きで、
【B】偕成社版『現代の民話・おばけシリーズ 5』
【C】ポプラ社版『日本むかしばなし[23]』
の比較で、怪異の前提・前段階【0】について確認している。
昨日引いた【B】の続き(102頁15行め〜103頁)に、
とも子は、みさ子のしたしい友だちでしたが、モモの花がさくころ、朝もやのたちこめ*1【102】る善福寺川(東京都杉並区)で、水死体となって発見されました。事故でないことはたしか/でしたが、いまだにだれが殺したかわからないのです。*2
いままで国内便にのっていたとも子は、まもなく香港行きの国際便にのることになり、/とてもたのしみにしていました。国際便のスチュワーデスは、ふりそでをきて、お客にサ/ービスできるからです。*3【103】
みさ子がひとりでアナウンスからサービスまでするのは、こんやがはじめてのこと/した。
と、事件の概要と、やはり怪異の舞台となった羽田空港発香港行の国際便、そして振袖のことが語られる。
「水死体」とあるのは2月2日付(1)に触れた、2017年12月23日付「松本清張『黒い手帖』(3)」に細目を示した、中公文庫『黒い手帖』改版186〜214頁「スチュワーデス殺し事件」を参照するに、当初「自殺」と見られていたことに拠るのであろうか。解剖の結果扼殺であったことが判明したので、水の少ない浅い川で、沈んでいたのでも浮かんでいたのでもなかったようだ。
【C】では事件のことは怪異【1】と【2】の間に説明されている。
一方【B】は、体験者と被害者が特に親しい友人であったことになっており、みさ子が機内に持ち込むハンドバックの中に、「とおりかかったやす子」に目撃させる設定で、103頁9〜11行め
‥‥/ちらっと、みさ子のハンドバッグのなかをのぞいて、
「あら、とも子さんの写真ね。」
といいました。*4
と、死んだとも子の写真があるということになっている。
そして1行空けて、103頁12〜104頁2行め、
羽田発一八時三〇分、香港行きのジェット機はとびたちました。花もようのふりそでを/きたみさ子は、乗客に、「ごきぶんは、いかがですか。」とにこやかに声をかけたり、「お茶/をおもちしましょうか。」と、おぼんにお茶や食事をのせて、機内をあるきました。*5【103】
みさ子がひとりでアナウンスからサービスまでするのは、こんやがはじめてのことで/した。*6
と、乗務の様子を説明するのだが、ここで注意されるのは、昨日引いた【C】では、振袖を着るのは何人か乗務しているスチュワーデスのうち1名、普通はチーフで時としてチーフ以外の人が着ることもあった、と説明していたのに対し、この【B】は国際線のスチュワーデスは振袖を着ることになっており、かつ、スチュワーデス1人だけで乗務しているようである。
続いて高度一万メートルを安定して飛行している様子が描写され、そして104頁6〜8行め、
みさ子は、ひととおりしごとをおえて、コンパート(スチュワーデス/がやすむへや *7)にもどりました。ひとり/になると、きんちょうしていた心がとけて、おもいにもつをおろしたときのように、ほっ/としました。*8
と、怪異【1】の起こる直前の様子が描写される。(以下続稿)