・角川文庫602『秋の日本』(7)
3月9日付(6)の続き。
「あとがき」4節め、底本と既存の邦訳について、253頁14〜17行め、
‥‥。テキストはカルマン・レヴィ版の第五十版本によった。本書の/抄訳本には大正三年に新潮社から出た「日本印象記」(高瀬俊郎訳)と、明治二十八年に春陽堂/から出た「おかめ八目」(飯田旗郎訳)がある。両書とも残念ながらわれわれの期待するものと/は遠い当時の意訳ものであるが、今日からみればいずれも珍書の一つに数えられよう。‥‥
とある。大正3年(1914)に新潮社、とあるので2017年11月10日付「Théophile Gautierの文庫本(4)」に取り上げた『100年前の新潮文庫/創刊版 完全復刻』を確認して見た。
第一編・第二編・第六編の目録には見えないが、第二十三編と第二十六編では「■次 目 庫 文 潮 新■」の3頁めの2点め「13■ピエルロチ 日 本 印 象 記(全) 高瀬俊郎譯」とあり、
佛蘭西の文豪ロチ明治十九年日本に來り、觸目印象せるものを描く。日光/あり、京都あり、濱離宮あり、吉原あり、觀察警拔、興味最も豐か也。
との紹介文が添えられる。原本は見ていない。
飯田旗郎『陸眼八目』(明治二十八年十二月二十日印刷・同年十二月廿三日發行・實價金參拾錢・春陽堂・二三二頁)は、前付(頁付なし)に扉(裏は白紙)、次いで「十月十八日」付の近衛篤麿毛筆書簡(4頁)を複製して載せ*1、「乙未十一月」付で槐南森大來(1863.十一.十六〜1911.3.7)が寄せた題辞の五絶句(3頁)、色刷版画の見開き口絵、「二千五百五十五年季秋」付の「陸眼八目自序」(3頁)、それから「目次」(1頁。裏は白紙))がある。
・「京見物」一〜三一頁8行め
・「江戸の舞踏會*2」三二〜八〇頁8行め
・「人間の料理」八一〜八六頁13行め
・「日光神山」八七〜一三五頁1行め
・「江戸見物」一三六〜一八五頁9行め
・「觀菊の御宴」一八六〜二三二頁4行め
すなわち「皇后の装束」「田舎の噺三つ」「サムライの墓にて」が省略されている。
旗軒飯田旗郎(1866.五.二〜1938.4.24)とロチの関係は、小田光雄のブログ「出版・読書メモランダム/出版と近代出版文化史をめぐるブログ」の2012-04-20「古本夜話195 ゾラの翻訳の先駆者飯田旗軒」に紹介されている。(以下続稿)