瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Prosper Mérimée “La Vénus d’Ille”(08)

・西本晃二 編訳『南欧怪談三題』(4)
 4月5日付(06)の続きで、西本氏「解題」の3節め(142頁6行め〜146頁11行め)について。冒頭、

 ここでちょっと横道に逸れて、これら三題の南欧を舞台とした物語を集めて一冊とし、上梓す/るに到ったについて経緯*1から始めようと思う。

とあるのだが「横道に逸れて」いるのに「から始めよう」は変である。
 どうも、この「解題」は最初、この節、すなわち「上梓するに到ったについて」の「経緯から」書き「始め」たらしい。しかしその後、4月4日付(05)に引いた1節め冒頭、135頁2行めにあるように「まず「解題」の常道にしたがい、作者と作品の解説から取りかかることとし」たので、この「経緯」を後回しにして「ここでちょっと横道に逸れて、」と書き足したものの、うっかり「始めようと思う」をそのままにしてしまった、と思われるのである。――外れているかも知れないが。
 続いて、142頁8〜9行め、

 じつは三篇の翻訳のうち最初の二篇は、本書のために今回新たに訳出したのではなくて、すで/に以前から出来ていた訳を手直ししたものなのである。

として、142頁10行め〜145頁2行め「鮫女」、1行空けて145頁3行め〜146頁6行め「亡霊のお彌撒」について事情を述べる。特に前者については長々と版権(著作権)や翻訳権の問題点などと絡めて述べているが、本作には関係ないので別に取り上げることにする。
 本作については、1行空けて146頁7〜11行め、

 これらに対してメリメ『ヰギヱのヴェヌス』の方は、前からいろいろな意味で「面白いな」と/は思っていたが、べつに訳そうという気はなくこれまできた。だが、今回、あとの二篇が超自然/を扱った怪奇譚であるので、それに合わせて、かつ未來社の西谷社長の「すでに訳がある二篇だ/けでは、一冊にする分量が足りないから」という命令もだし難く、これだけは本書のために新た/に訳出したものである。

と云う扱いなのである。確かに本作(扉込みで62頁)がなければ、100頁に満たない。(以下続稿)

*1:ルビ「いきさつ」。