瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

Prosper Mérimée “La Vénus d’Ille”(16)

・I giochi del diavolo “la Venere d'Ille”(6)
 何と言っているか分からないTVドラマの検討など、言葉が分かっている人が見て何か書いたらそこで無意味になってしまうのだから我ながら酔狂なことを始めたもんだとほとほと(?)感心しながら、乗り掛かった船なので最後まで続けるつもりである。
 ――部屋に戻った主人公、風の吹き込む窓に近寄って、窓を開けると何故か窓硝子に女神像が写る。いや、写ったように見えて主人公がぎょっとする、と云う場面がある*1
 台所では披露宴に向けての準備が進む。仔鹿の首を落とし、腸詰めをあぶり、豚や鶏を解体する。燭台などをマリアに磨かせる Peyrehorade 夫人は犬(ボーダーコリーか)を抱いている。小麦粉を捏ねる中年女、卵を幾つも割って掻くマリア。――この場面は早朝なのであろう。
 恐らく朝食後、出発までに出来た時間に、主人公は何故か銅像の後ろでスケッチをしている――その顔は女神像のものではなくクララである。そこに正装のアルフォンスが来て「マチュー」と声を掛ける。微笑んで応じながらスケッチブックに挟んで隠す主人公。
 と、歓声が響いてポームの試合が始まる。1チーム4人で、ネットはあるがラインはないらしい。
 地元チームが劣勢で観衆は落胆し、アルフォンスは苛立って大声を上げる。ついに黒の上着を脱いで女神像の左手に投げて掛けると、アルフォンス君の加勢を喜ぶ観衆の拍手の中、コートに入るが、早速空振りする。
 そこで右手の小指に嵌めた指輪を見てタイムを取り、指輪を外して女神像の左手の薬指に嵌め、さらに黒のベストを脱いで上着の上に掛ける。そして試合に戻って大活躍して圧倒。観衆は大喜び。
 館から正装した Peyrehorade 夫妻が出掛けようと出て来て、ポームにかまけている息子の様子を見て驚き、駆け寄って声を張り上げる。
 原作のアルフォンスは結婚式を前に、地元の観衆を前にして相手チームを散々に撃ち破っての大逆転勝利に、すっかりのぼせ上がってしまって相手を侮辱するような台詞を吐くのだが、TVドラマでは決着が着く前に Peyrehorade 氏によって中断されるので、相手チームとも握手をして気持ちよく別れ、そして駆け寄って来る子供たちを始めとする観衆の歓呼に応えながら、女神像の左腕に掛けた上着とベストを手に、薬指の指輪はそのまま、出掛けるのである。
 場面はオルガン演奏が響く中、クララとアルフォンスの手がアップで写って、神父の声がして――結婚式の最中に切り替わる。アルフォンス君はポケットを探るが指輪はない。そこで左手の小指に嵌めていた別の指輪を外して、新婦クララの左手の薬指に嵌める。
 続いて乾杯のグラスが写されて、明るい日の照る庭での祝宴の場面、アルフォンス君は上機嫌でワインの瓶を喇叭飲みし、若い女たちの中に入って目無し鬼をして遊ぶ。――移動のシーンはなかったが、この庭の場面で結婚式が原作通り Puygarrig で行われたことが分かる。女たちと戯れて大騒ぎするアルフォンスに眉を顰め、さらに睨むようにするクララ。それを見ていた主人公と目が合って、しばらく静かに会話。クララの左目、唇、右目がアップになる。
 原作には、4月14日付(12)に述べたように主人公が新婦と言葉を交わす場面はない。初めて新婦を見たときに、アルフォンスは婿として相応しくないと思うだけなのだが、TVドラマでは、どうもここで直接、新婦にそのようなことを話して、新婦は当然のことながらアルフォンスとの結婚を肯定する、と云う会話になっているようだ。(以下続稿)

*1:映像が粗いので、確実にこうだとは言い切れない。