瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

事故車の怪(14)

別冊宝島92「うわさの本」(3)
 それでは一昨日からの続きで、石丸元章大月隆寛の対談に添えられた囲み記事「うわさ投稿傑作選」について見て置こう。囲みの中も3段組で1行18字、上段の初め4行分にタイトル、1行めは上下端が半円形の黒にゴシック体白抜きで「うわさ投稿傑作選」のシリーズ(?)名と2行めに灰色の縦長の長方形に楷書体太字で編名。最初に導入文があり(1・2と分割されているものは1のみ)●にゴシック体で見出し。明朝体で噂を紹介し末尾には括弧に西暦下2桁の年と月、都道府県名を示す。
 見出しも示したいところであるが、ほぼ「●見出し(年月・場所)」だけが列挙されているだけの編もあって、細かく内容を吟味する余裕もないので、そこまではしない。
 項目数は●の数を勘定して示した。
 行数は2段めの行数を示し、3段めの行数が2行めに比して少ない場合(-1)もしくは(-2)と添え、さらにこの囲み記事の右の本文行数も添えた。
・55頁左「有名人編1」3項、16(-2)行、本文7行。
・57頁左「有名人編2」11項、10行、本文12行。
・59頁左「死・オカルト編1」3項、16行、本文7行。
・61頁左「死・オカルト編2」9項、17(-1)行、本文6行。
・63頁左「時事・社会問題編」9項、10(-2)行、本文13行。
・65頁左「年齢疑惑編」11項、14行、本文9行。
・67頁左「セックス・男女関係編」14項、21(-2)行、本文3行。
・69頁左「明らかなウソ編」16項、15行、本文8行。
 これらの噂のうち、幾つかはこれまでの当ブログの記事に関連するので遠からず取り上げる予定であるが、全体については石丸氏の投稿エディターとしての仕事をもう少し見てから、扱うことにしたい。――当時、テレビも雑誌も殆ど見なかった私には、登場する人物や自明のことのように言及されている事象に、全く思い当たらないことが少なくない。いや、それでも当時活躍していた人物については、テレビもみんな見ていたし、何かしら知る機会があったのである。
 さて、ようやく本題の事故車の怪の噂であるが、59頁の囲み内の3段め、4行めから最後まで。

伊奈かっぺい、呪いのソアラで今日も走る
「あるアベックがサンルーフ付きのソア/ラでドライブしていた。女はサンルーフ/から顔を出していた。運転していた男は/ぐんぐんスピードをあげ、時速一八〇キ/ロに達した時、前から飛んできた金属の/カンバンが女に当たり、首がもげてし/まった。そのソアラはその後、群馬県の/中古車屋で六万円で売りに出され、現在/伊奈かっぺいが乗っている」(八七年七月群馬県バリエーションに「ある大風の/夜」「東北自動車道を」等。


 「白いソアラ」という色の指定がなく、破格の安さで売られているソアラの状態については「新車同然」とされることが多いようだが、その指定もない。ヴァリエーションとして取り上げられているのも事故の状況や怪異現象ではなく、事故の原因と場所で、どうもポイントを外しているような印象を受けるが、当時はまだ話型が固まっていなかったのであろうか。題に「呪いのソアラ」とあるから、この最初の事故の後も何らかの怪異が続き、それにつれて値段も(いきなり「六万円」で出たのではなく)次第に下がったのだろうと推察されるのだけれども、説明されていない。――初めからなかったのか、それとも石丸氏(もしくは投稿者)が当然のこととして省いたのだろうか。
 しかし5月11日付(11)に見た、日本の現代伝説『ピアスの白い糸』に取り上げられている例と、走行中に首を出していた同乗者が何かにぶつかって首がもげ、と云う要素が、高級車ソアラの象徴(?)であるサンルーフも活用して語られていること、そして群馬県であることが共通している。さらに昭和62年(1987)7月と云う時期も得られた。大島広志が記録した専門学校生の報告と合わせて、群馬県の格安のソアラの噂は昭和62年(1987)に発生したとの見当で良さそうである。大島氏が報告を受けた時期が月まで特定出来るとさらに絞り込めるかも知れないのだけれども。
 なお、伊奈かっぺい(1947.4.16生)の登場は、この噂が広まった結果付け加わった尾鰭と捉えられているようだが、実は群馬県ソアラの噂の、発生に近い時期から既に語られていたことになる。――伊奈氏はソアラに乗っていたのだろうか。それよりも私には、伊奈氏が青森県出身と云うことで、昭和46年(1971)頃に語られていた青森県の中古車の怪との繋がりを、見たくなってしまうのである。青森県から「東北自動車道を」南下して群馬県へ……まぁ証明は困難だから、これ以上発展させられないだろうけれども。(以下続稿)