瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』(4)

 昨日の続き。
 山田奨治「妖怪データベースから妖怪事典へ」の2節め(621頁上段12行め〜622頁上段3行め)の「妖怪事例のカード化」は主として事例の要約文について、3節め(622頁上段4行め〜624頁下段18行め)の「妖怪データベースの公開と反響」は、有料ソフトを使わず山田氏が書いた自前のプログラムでデータベースを動かしていること、アクセス数*1が好調に伸びていること、そして人気の理由として事例の要約情報を付けたことと利用制限を設けず無料であることを挙げている。最後、4節め(624頁下段19行め〜625頁下段15行め)の「事典への展開」は簡略で、データベースを書籍化する際に生じたであろう問題点とその解決策についての記述がない。――解説文の書き方や事例の選定など、執筆者によってかなり差があるように見えるのだが、どのような決まりがあって、どの程度の逸脱が許されたのか、そんな辺りについても記述して欲しかったと思う。分担については以下のように纏まった記述がある。625頁上段6〜18行め、

‥‥/データベースから抽出した呼称から項目名と執筆者を選定/する作業には、飯倉義之の多大な貢献があった。総勢九九/名に及ぶ執筆陣の中心は、実際に妖怪データベース作りに/携わったメンバーと、日文研での小松研究会の班員に加え/て、多くの若手研究者、ならびに神奈川大学國學院大學・/成城大学総合研究大学院大学筑波大学早稲田大学の/大学院生に執筆していただいた。さらにアイヌの事例の選/定・執筆とアイヌ語表記の監修は千葉大学の遠藤志保氏/に、琉球弧の事例の選定・執筆は澤井真代氏に、現代の事/例の選定・執筆は渡辺節子氏を中心とする「不思議な世界/を考える会」のかたがたに、それぞれご協力いただいた。/そして全体の査読を、編者の小松和彦常光徹・山田奨/治・飯倉義之が行った。


 ここに名前の挙がっている2人の女性、まづ遠藤氏は2015年4月から北海道博物館アイヌ民族文化研究センターの研究職員で、それ以前の経歴はネットでは分からないが、2001年度に千葉大学文学部日本文化学科を卒業しているから、大学院に進学して、本書が出た当時は助手・助教などで千葉大学の所属であったのだろう。
 澤井氏は現在は立正大学文学部特別研究員で、経歴は博士論文を刊行した次の本のAmazon詳細ページの「著者略歴」に拠って判明する。

石垣島川平の宗教儀礼―人・ことば・神

石垣島川平の宗教儀礼―人・ことば・神

 一応引き写して置くと、――2000年早稲田大学第一文学部卒業、2002年早稲田大学大学院文学研究科考古学・文化人類学専攻修士課程修了。出版社勤務を経て2005年総合研究大学院大学文化科学研究科日本歴史研究専攻博士課程入学、日文研ではなく歴博(歴史民俗博物館)の院生で2010年に修了している。
 すなわち、2人とも当時30代の若手研究者であった。さらに若い大学院生たちも多く含まれているらしい。しかし見たところ、山田氏は触れていないが、刊行当時で40代かそれ以上の人も(当然のことだが)少なからず見受けられる。
 それから当ブログでも、仲間内の著作には「出典」としてしばしば言及されているのに、私ら一般人には閲覧の方法がないので困るとして触れた「不思議な世界を考える会会報」の不思議な世界を考える会が、協力者として出て来る。――そう思って「現代」の怪異・妖怪の項目を拾って見るに、確かに「事例」の殆どが「不思議な世界を考える会会報」なのである。
 なお、前回『現代民話考』から事例を採っていない、と述べたが、執筆者によっては『現代民話考』から事例を挙げている。しかしやはりそれはイレギュラーな処置のようである。(以下続稿)

*1:この記述中、623頁下段1行め「‥‥、たぶんこれの何一〇倍かの数字になるだろう。‥/‥」の「何一〇倍」は「何十倍」。