瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(38)

・日本の現代伝説『ピアスの白い糸』(3)
 昨日の続きで、大島広志「Ⅳ 家族」の3節め「父の背中」の最後を見て置こう。
 昨日見た「〔参考〕背中に殺した女」には、特にコメントはない*1ように見えるが、続く全体の纏めのコメントに、効かしてある。171頁15行め〜172頁6行め、

 守護霊の存在を信じているある人は、霊障状態は四段階あるとし、その第二段階については、「後/頭部や背中に、悪い例がピッタリ憑いている状態です。上半身をぐるぐる回っています」と説明する。/つまり、背中に悪い霊が憑くというのである。殺した父親の背中に、殺された母親の姿が現われると【171】いうのは、新しい発想ではないことがわかる。
 「父の背中」の類話は他に、常光徹学校の怪談2』(講談社)、TBSラジオ編『とっておきの怖/い話』(二見文庫)にも収められている。『学校の怪談2』の「おとうさんの肩」は例話の再話。『と/っておきの怖い話』の「お父さんの背中」は『学校の怪談2』の転用でありながら、「十五歳のO・/Sさんの投稿」として収録されている。「父の背中」は、メディアの中で増幅され世に広まっていると/いうのが現状といえよう。


 前半の引用には、171頁16行め、最後の文字の右に(2)と添え、172頁7行め「注」として10行め「(2) 三原珠著『あなたを救う守護霊』日本文芸社、一九九四年」とある。三原氏よりも前からこういう発想があったと云うことで「〔参考〕背中に殺した女」を引いている訳だが、しかし、所謂“霊能者”の云っていることは根拠になるのだろうか。

 後半、『とっておきの怖い話』はラジオ番組への投稿であるらしい。しかし『学校の怪談』シリーズはかなり受けていたから、直接「転用」したのだとすれば良い度胸だし、すぐにパクリとバレるんじゃないかと心配しても良さそうなものだ*28月11日付(30)に述べたように、友人から聞かされた話を、かなり評判になっている本に載っていると知らずに、投稿してしまったと云う可能性もありそうだし、そもそも『学校の怪談』の売り方が、こういう伝播の仕方に拍車を掛けるものだったのではないのか*3。(以下続稿)
追記】15歳の少女の投稿をもとに、ラジオ番組の作家陣が構成・再話した、それが常光氏の再話に(膨らませるところは似たような辺りだろうから)似ていた、と云う可能性も考えられる。

*1:引用の前、171頁2行めに「‥‥。/幽霊話としてはこんな話もある。」とあるのみ。

*2:ラジオ番組の方は気付かずに採用している訳だが、同世代の『学校の怪談』読者が気付きそうなものだ。

*3:『とっておきの怖い話』を見ていないので、大島氏の云う「転用」を思わせるくらい似ている、と云う前提で考えて見たが、全く別に、同じように成長した話を記録していた、と云う可能性もあろうかと思う。――題だけだが「肩」と「背中」で異なっているのも気になる。【2020年8月21日追記2019年6月15日付(091)以下に確認したように、大島氏の『とっておきの怖い話』批判は誤解に基づく言掛りである。もし今後日本の現代伝説『ピアスの白い糸』を新書もしくは文庫化して再刊するようなことがあるなら、訂正の上、O・Sさんの投稿に正当な位置付けを与えるよう(削除の上、無視するのではなく)希望します。