・日本の現代伝説『ピアスの白い糸』(3)
昨日の続きで、大島広志「Ⅳ 家族」の3節め「父の背中」の最後を見て置こう。
昨日見た「〔参考〕背中に殺した女」には、特にコメントはない*1ように見えるが、続く全体の纏めのコメントに、効かしてある。171頁15行め〜172頁6行め、
守護霊の存在を信じているある人は、霊障状態は四段階あるとし、その第二段階については、「後/頭部や背中に、悪い例がピッタリ憑いている状態です。上半身をぐるぐる回っています」と説明する。/つまり、背中に悪い霊が憑くというのである。殺した父親の背中に、殺された母親の姿が現われると【171】いうのは、新しい発想ではないことがわかる。
「父の背中」の類話は他に、常光徹『学校の怪談2』(講談社)、TBSラジオ編『とっておきの怖/い話』(二見文庫)にも収められている。『学校の怪談2』の「おとうさんの肩」は例話の再話。『と/っておきの怖い話』の「お父さんの背中」は『学校の怪談2』の転用でありながら、「十五歳のO・/Sさんの投稿」として収録されている。「父の背中」は、メディアの中で増幅され世に広まっていると/いうのが現状といえよう。
前半の引用には、171頁16行め、最後の文字の右に(2)と添え、172頁7行め「注」として10行め「(2) 三原珠著『あなたを救う守護霊』日本文芸社、一九九四年」とある。三原氏よりも前からこういう発想があったと云うことで「〔参考〕背中に殺した女」を引いている訳だが、しかし、所謂“霊能者”の云っていることは根拠になるのだろうか。
とっておきの怖い話―東京ミステリー (二見WAi WAi文庫)
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【追記】15歳の少女の投稿をもとに、ラジオ番組の作家陣が構成・再話した、それが常光氏の再話に(膨らませるところは似たような辺りだろうから)似ていた、と云う可能性も考えられる。
*1:引用の前、171頁2行めに「‥‥。/幽霊話としてはこんな話もある。」とあるのみ。
*2:ラジオ番組の方は気付かずに採用している訳だが、同世代の『学校の怪談』読者が気付きそうなものだ。
*3:『とっておきの怖い話』を見ていないので、大島氏の云う「転用」を思わせるくらい似ている、と云う前提で考えて見たが、全く別に、同じように成長した話を記録していた、と云う可能性もあろうかと思う。――題だけだが「肩」と「背中」で異なっているのも気になる。【2020年8月21日追記】2019年6月15日付(091)以下に確認したように、大島氏の『とっておきの怖い話』批判は誤解に基づく言掛りである。もし今後日本の現代伝説『ピアスの白い糸』を新書もしくは文庫化して再刊するようなことがあるなら、訂正の上、O・Sさんの投稿に正当な位置付けを与えるよう(削除の上、無視するのではなく)希望します。