瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(68)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(4)
 今日も、昨日の続きで「山と高原」第二三三号54〜56頁に掲載された「雪の夜の伝説」の「山の宿の怪異」本文を、その36年後に「あしなか」第弐百弐拾四輯13〜17頁に寄稿した「山の伝説――古い山日記より」の「山の宿の怪異」と比較して行くつもりでしたが、続きを見る前に8月7日付(26)に仮の案として示した、末広氏が依拠したと思しき①白銀冴太郎「深夜の客」及び、やはり「深夜の客」の書き換えである②杉村顕「蓮華温泉の怪話」との構成に準じて、末広氏の③「雪の夜の伝説」と④「山の伝説」の構成も確認して置きましょう。9月11日付(52)に見たように④には【A】の前に、執筆の動機を述べた1段があります。
【A】導入〜場所の説明 ③54頁1段め2〜8行め ④13頁上段7〜13行め
【B】導入〜時期の説明 
    ③54頁1段め9行め〜2段め4行め ④13頁上段14行め〜中段9行め
【C】男の来訪〜主人との会話 
    ③54頁2段め4行め〜4段め9行め ④13頁中段10行め〜14頁上段26行め
【D】主人の亡妻と八歳の子供 ③54頁4段め10〜13行め ④14頁上段27〜中段4行め
【E】泣き、怯える子供
    ③54頁4段め14行め〜55頁1段め24行め ④14頁中段4行め〜下段16行め
【F】吠える二匹の犬 ③55頁1段め25〜28行め ④14頁下段17〜21行め
【G】主人の疑いと行動〜狐・鉄砲
    ③55頁1段め29行め〜2段め23行め ④14頁下段21行め〜15頁上段27行め
【H】主人の退去依頼と男の退去
    ③55頁2段め24行め〜3段め12行め ④15頁上段27行め〜中段26行め
【I】巡査の来訪と男の追跡
    ③55頁3段め13行め〜4段め13行め ④15頁中段27行め〜下段17行め
【J】巡査による男の捕縛と説明
    ③55頁4段め13行め〜56頁1段め15行め ④15頁下段17行め〜16頁上段7行め
【K】子供の怯えたもの
    ③56頁1段め15行め〜2段め8行め ④16頁上段8行め〜中段4行め
 こうして割り当てて行くと、この仮構成分けが余り良く出来ていないことに気付かされて厭な気分になって来ますが、やり直しは別の機会に果たすことにして、当ブログではこれで通すことにします。
 それはともかく①②はこれに続いて【L】男の述懐が最後にあったのですけれども、末広氏の書いたものにはなく、代わって
【M】冬眠に入る宿 ③56頁2段め8〜14行め ④16頁中段5〜11行め
を描写して締めくくっています。④にはさらに、9月14日付(55)に見たように1行空けて16頁中段12〜21行めに蓮華温泉の現況が付加されています。

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 杉村顕(顕道)と「サンデー毎日」の関係については、8月8日付(27)に、杉村翠(顕道の次女)からの電話に示唆されての東雅夫tweet に触れました。それから9月9日付(50)に見た、『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の紀田順一郎「杉村顕道の《発見》」にも言及がありました。紀田氏の見た「略歴書」には作品名が書いてあったのか、紀田氏がそこまで書いていないので分からないのですが、東氏は次女の電話で「深夜の客」を「サンデー毎日」に発表した「作品」である「可能性が極めて高くなった」と見ているようで、私はまだ見ていないのですが『山怪実話大全』の第三刷にその旨の「追記を入れ」たそうです。
 しかしながら、これは勇み足と云わざるを得ません。「直木賞のすべて」の川口則弘(1972生)の子サイト「文学賞の世界」の「『サンデー毎日』大衆文芸入選作一覧」を見るに、その第19回(昭和11年/1936年度・下)の「佳作」に杉村顕「先生と青春」があり、入選作5篇の「『サンデー毎日昭和11年/1936年11月1日号[第15年53号]掲載」に続いて、選外佳作14篇も「『サンデー毎日昭和11年/1936年新作大衆文芸[11月5日・第15年54号]掲載」とあります。すなわち、杉村氏が「略歴書」に書き、次女が「しかも顕道は「サンデー毎日」にも投稿したことがあったのだそうな!」と記憶していたのは、この「第19回『サンデー毎日』大衆文芸」の選外佳作を指す「可能性が極めて高」いと云うべきでしょう。考証――筋を辿ると云うのはなかなかに難しいものです。綺麗に繋がったと思ったのが、実は違うと云う、その繰り返しです。(以下続稿)