瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(77)

・末広昌雄「雪の夜の伝説」(12)
 昨日の続きで、末広氏が依拠したと思しき佐々木喜善『東奥異聞』の「嫁子ネズミの話」の「一」節め、1段落めの残りを抜いて見ましょう。

‥‥。この村の山中にこだまネズミというて、普通のネズミよりはやや小がらな、焦茶色の艶のある毛色のネズミがすんでおりますが、この小ネズミが、酷寒の樹木の枝などが凍り折れるようにしばれるときなど、木のまたなどにいて、じつに恐ろしい音をたてて破裂してしまいます。狩人がその音響をたよっていってみると、ネズミの背がポンと割れ裂けて死んでいるそうであります。


 太字にしたところは傍点「ヽ」が打ってあるのですが、再現出来ないので仮に太字にしました。
 昭和31年(1956)の「山と高原」二月号第二三三号)掲載「雪の夜の伝説」の「狩山の鼠」の冒頭部、12月4日付(74)の続きを抜いて見ましょう。56頁2段め18〜24行め、

‥‥、この村の山中にコダマ鼠と/いう並の鼠よりは稍小柄な焦茶色の艶のあ/る鼠が棲んで居て、寒気で樹木の枝などが/凍り、折れる様にしばられる時など、木の/またなどにいて破裂して了う。狩人がその/音響を聞き伝えて行って見ると、鼠の背が/ポンと割れ裂けて死んでいると云う。‥‥


 次に、平成4年(1992)の「あしなか」第弐百弐拾四輯掲載「山の伝説」の「山の神の伝説」の、9月14日付(55)の引用の続き、3段落め(16頁下段5〜11行め)を抜いて見ます。

 この村の山中にコダマ鼠という並の鼠より/やや小柄であるが、焦げ茶色の艶のある鼠が/棲んでいて、寒気で樹木の枝が凍り、折れる/ようにしばれる時に、木の股などにいて、破/裂してしまう。狩人がその音響を聞きつけて/行ってみると、鼠の背がポンと割れ裂けて死/んでいると言う。


 「山と高原」で「しばられる」となっていたのを「あしなか」では「しばれる」に直しています。――「山と高原」が「しばられる」としたのは、編集部が誤記と見て改めたのか、末広氏が脱字と見て改めたのか、とにかく昭和31年(1956)当時「しばれる」と云う方言が関東では一般に知られていなかったからでしょう。(以下続稿)