・単行本(八木書店・四六判上製本)
・昭和三十一年一月二十九日発行(四+四+二六五頁)定価 四百五十円
・昭和三十一年一月二十九日初版発行・昭和三十一年四月 十 日再版発行・定価 四百五十円
装幀に初版と再版で異同はない。古書店のサイトに拠れば、限定200部の特装本があるようだが、私の見た初版・再版は番号が入っていないので、どうもそう云うものではないらしい。
さて、私の見た初版には函(高 19.6×奥行 13.2×幅 2.4cm)が保管されている*1。外側を植物の繊維片を漉き込んだ和紙で包んでいる。背には赤い紙(19.2×2.0cm)を貼付し、上部に草書で標題が入る。これは白い繊維を漉き込んだやや黄色い和紙の扉の上部中央には同じ大きさで朱で印刷されており、岩波文庫版13頁(頁付なし)中扉には上部中央にやや縮小されて入っている。下部に横長の明朝体で著者名、下から1.5cmほどのところに明朝体横組みでごく小さく「八 木 書 店」とある。側面(表紙側)の上部中央に赤い紙(6.6×9.0cm)を貼付してあり、子持枠(5.2×7.5cm)に明朝体横組みで、上部中央に著者名、下部中央に版元名、中央やや上寄りに太字で標題。
・岩波文庫31-161-1『鴎外の思い出』
- 作者: 小金井喜美子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1999/11/16
- メディア: 文庫
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・1999年12月22日第2刷発行 定価660円
・2008年11月14日第4刷発行 定価700円*2
・2014年11月14日第5刷発行 定価700円*3
第1刷と第2刷のカバーは一致。
本文は岩波文庫版(第1刷)を底本として青空文庫に収録されている。
昨日取り上げた『森鴎外の系族』よりも本書が先に岩波文庫に収録されたが、その事情は285〜304頁、森まゆみ「解 説/――知的で品格高い明治女性の随筆――」より察することが出来る。冒頭、285頁4〜6行めに、
文学者にして陸軍軍医総監森鴎外の妹、人類学者小金井良精*4の妻、喜美子は生前、二/冊の随筆を刊行した。『森鴎外の系族』(昭和十八年、大岡山書店、A5判、本文四三八頁)と/本書『鴎外の思ひ出』(昭和三十一年、八木書店、B6判、本文二六五頁)である。‥‥
とこの2冊が取り上げられ、そして286頁6〜13行めに、
本書『鴎外の思ひ出』は古書価も高く、いま手に入りにくい。『森鴎外の系族』が一/九八三年に日本図書センターから「近代作家研究叢書15」として復刻されているが、そ/れも文学研究者向けで高価(五千円)であり、一般読者の目に喜美子の著作が触れるのは/初めてといってもよいかもしれない。その意義は大きいと思われる。従来、鴎外の妹と/して著作の一部が鴎外研究に引用されるだけであったが、これからは女性文学者小金井/喜美子として研究される価値があろう。いまはここに読者の便宜のため、とりあえず小/伝をたてておく。そのさい、本書にあることはできるだけ省き、『森鴎外の系族』ほか/の文献の方をより多く紹介することにする。
とある。順序から云えば『森鴎外の系族』を先にすべきなのだが、16年前に刊行された復刻版があって増刷もされていることから、戦後の刊行であるが全く復刊されることのなかった本書を選択したのであろう。『森鴎外の系族』は大部で、雅文や和歌を含み現在では読み易いとは云えない。本書は敬体の口語文で読み易く、1篇1篇が短く分量も手頃である。
ところが翌月に増刷が掛かるほど売れ行きが良かったので、その予定のなかった『森鴎外の系族』も収録することにして、本書の1年5ヶ月後に刊行に至ったのであろう。(以下続稿)