・北原尚彦所蔵の『信州百物語』初版(1)*1
さて、昨日引いた杉村氏の次女・杉村翠の談話の中に、北原尚彦が初版を持っていることが「今回の復刊でわかった」としているが、そもそもは無関係な動きであった。
すなわち、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の版元・荒蝦夷の代表者土方正志が東雅夫を伴って杉村翠の自宅を訪ねた半月ほど後、東京創元社のウェブマガジン「Webミステリーズ!」にて、北原尚彦「SF奇書天外REACT」の連載が始まった。この連載は2012年12月5日にアップされた「総まくり! 科学童話『原子の踊り』から二十一世紀のSF奇書まで」――SF奇書天外REACT【第30回・最終回】[2012年12月]まで続いたが、その初回が、2009年10月29日(2009年11月5日付)にアップされた「SF奇書天外REACT【第1回】探し求めた『怪談十五夜』ついに入手!」なのであった。
この「SF奇書天外REACT」は、早川書房の「SFマガジン」に2001年1月号から2005年12月号まで連載され、大幅に加筆訂正して東京創元社から単行本が刊行された「SF奇書天外」の続篇である。
・KEY LIBRARY『SF奇書天外』2007年8月30日 初版・定価2,300円・東京創元社・325+viii頁・四六判並製本
- 作者: 北原尚彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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この作者には、先に『怪談十五夜』(友文堂書店/一九四六年)と|いう本もあるらしいのだが、残念ながら未入手。欲しいなあ。欲し|いなあ。
と触れていた(「/」が使用されているので改行位置は「|」で示す)のを「ついに入手」した訳である。
この「SF奇書天外REACT」も大幅に加筆訂正して単行本化されている。
・KEY LIBRARY『SF奇書コレクション』2013年12月25日 初版・定価2,300円・東京創元社・323+iii頁・四六判並製本
- 作者: 北原尚彦
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2013/12/21
- メディア: 単行本
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そして本題が、9~17頁「第1回 探し求めた『怪談十五夜』ついに入手!」になっているのだが、まづ、入手経緯について述べる(9頁2行め~10頁8行め)。初出との異同は「うわっ、タダみたいな値段だ。」を、10頁7行め「うわっ、三百円って、タダも同然ですよ!」と具体的な値段にしていること。
続いて収録作品の紹介(10頁9行め~11頁15行め)、まづ10頁9行め「 本書は、全部で十三話を収録。短い話が多いので、それでも百二十ページしかない。」として(初出では算用数字全角)、10~14行め「下足番の話」最後(13~14行め)は「‥‥。この下足番の男、講釈師の神田伯山*2にそっくりだと|いうことになっている。」となっているのだが、初出では「‥‥。この下足番の男、講釈師の神田泊山にそっくりだということになっている。神田泊山に似ている人物と言えば、皆さんもご存じの名探偵明智小五郎である。つまりこの下足番は明智小五郎そっくりだったのであります。」となっていた。次いで15~18行め「二つ人魂*3」、19行め~11頁2行め「離家の人影」、3~4行め「「深夜の葬列」は、とある人物が深夜に葬列に遭遇したのだが、実はそれが自分のための葬儀だった、|という話。‥‥」は、初出では「 その他、深夜に遭遇した葬列は自分のためのものだった、という「深夜の葬列」。‥‥」となっていた。続く北原氏のコメントは同じ。ここから梗概を短くするつもりで「その他」とランクを下げたのだが、余り短くなっていないので単行本では止したようだ。5番めに、5~7行め「温泉寺奇談」、次に8~9行め「手相奇談」、最後に7番め、10~14行め「蛻庵物語」に初出にはルビ「ぜいあん」がないのは、ちょっと読みづらい。まぁ読めなくても困らないけれども。
そして「SF奇書天外REACT【第1回】(1/2)[2009年11月]」の最後、
しかし、読んだことのある話がちらほらとあった。でも実は、それは予想していたこと。ネタを明|かすと、『SF奇書天外』刊行後に、編集部経由で「『怪談十五夜』を増補したのが『箱根から来た男』|である」という情報を頂いていたのである。
は、単行本11頁16~18行めも同文である。
2009年10月29日にアップされた(2009年11月5日付)北原尚彦「SF奇書天外REACT【第1回】探し求めた『怪談十五夜』ついに入手!(2/2)[2009年11月]」は、まづ『怪談十五夜』と『箱根から来た男』の収録作品を一覧にして対照させている。単行本11頁19行め~14頁6行め。単行本では『怪談十五夜』収録作品一覧の前に、12頁8行め「‥‥。『怪談十五夜』は「十五夜」なのに十三篇しか入っていない。ヘンですね。」と云う突っ込みを追加している。
続いて杉村顕道の親族や本人の経歴、著書について、かなり詳しく述べている。単行本14頁7行め~15頁6行めにもルビの追加や数字の処理を除いてほぼそのまま収録されているが、14頁10行め「杉村幹(杉村顕道の兄弟)」と12行め「顕道の兄で洋画家の杉村惇*4」は、書き替えたことが後で問題になるような箇所ではないから叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』の杉村氏の次女・杉村翠の談話「父・顕道を語る」の1節め「東京時代」に従って、それぞれ「杉村幹(杉村顕道の兄)」そして「顕道の弟で洋画家の杉村惇」と改めるべきであった。
さて、ここからが本題なのだが、長くなったので今回はここまでにする。(以下続稿)