瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「木曾の旅人」と「蓮華温泉の怪話」拾遺(129)

・杉村顕道の家系(2)
 杉村顕(1904.5.26~1999.6.11)と杉村惇(1907.9.7~2001.8.13)は生歿年月日も判明している。
 いや、叢書東北の声11『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』435~455頁、杉村顕道の次女・杉村翠の談話「父・顕道を語る」には、歿年月日は451頁下段16行め~452頁下段2行め、9節め「その晩年」に、452頁上段17~18行め、

 父は平成十一(一九九九)年六月十一日に、九十五/歳で亡くなりました。‥‥

と明示されているが、前回引いたように生誕については年のみで月日を示していない。
 そこで457〜464頁、紀田順一郎「杉村顕道の《発見》」には、立風書房版『現代怪奇小説集』に『彩雨亭鬼談 箱根から来た男』所収「ウールの単衣を着た男」収録に当たって、463頁13行め「編集部に届いた略歴書」のあることに触れているので、念のため確認して置くことにした。
 ちなみに457頁(頁付なし)「杉村顕道の《発見》」の扉に、中島河太郎紀田順一郎 編『現代怪奇小説集』の書影が掲載され、458頁(頁付なし)下部中央に、

前頁写真は「ウールの単衣を着た男」を収録した中島河太郎・/紀田順一郎編『現代怪奇小説集1』(立風書房・昭和四九年)

とあり、459頁4~6行め、

 ‥‥、一九七四年に中島河太郎(一九一七~一九九九)と私が編纂した『現代怪奇/小説集』全三冊立風書房というアンソロジーに、顕道の作品「ウールの単衣を着た男」を採録さ/せてもらった‥‥

とある。しかし私は昭和49年(1974)版を見ていない。
・『現代怪奇小説集』下(1981年12月20日 新装第1刷・定価1,300円・347頁・四六判上製本

現代怪奇小説集 下

現代怪奇小説集 下

・『現代怪奇小説集』(1988年7月10日 第1刷発行・定価2600円・689頁・四六判上製本
現代怪奇小説集

現代怪奇小説集

 但し昭和63年(1988)版のAmazon詳細ページの書影は、昭和49年(1974)版『現代怪奇小説集1』と取り違えている。
 それはともかく、まづ3冊本、次いで上下2巻本、さらに1冊本が出たと云う順序である。昭和56年(1981)の2巻本が「新装」と云うのは、既に昭和52年(1977)に2巻本が刊行されていて、それとは装幀を替えた、と云うことらしい。
 2巻本『下』7~347頁は、1冊本349~689頁に一致する。
 2巻本209頁・1冊本551頁は「ウールの単衣を着た男・杉村顕道」の扉(頁付なし)で、その裏(頁付なし)下部右寄りに著者の略歴・解説。続いて2巻本211~218頁・1冊本553~560頁に上下2段組の本文。ここでは2巻本210頁・1冊本552頁の「■杉村顕道(すぎむら・けんどう)」の紹介を抜いて置こう。2~14行め、西暦年は半角。

 明治三十七年(一九〇四)五月二十六日、東京に生まれる。昭和五年、国学院/大学卒業。教育界に投じ、長野、樺太、秋田。宮城など各県の学校に奉職/のかたわら、「サンデー毎日」に作品を発表。昭和十九年、時世に感ずる/ところあって教鞭をなげうち、現在は財団法人宮城県精神障害者救護会の/常任理事を勤めている。
 著書は「近代名医伝」「和訳唐詩百首」「儒海―儒者名鑑」のほか句集「雪/布」など多数があるが、昭和三十七年刊の「彩雨亭鬼談・箱根から来た男」/(仙台・椿書房刊)は、比較的世に知られざる怪奇小説作品集として紹介/の価値がある。
 碁敵の怨念を描いた「白鷺の東庵」、輪廻を扱った因縁話「黄牛記」、菖/蒲の精が人間と契る「扶桑第一」、大震災にまつわる奇談「箱根から来た/男」、妖刀の来歴を語る「節句村正」その他二十一編を含んでいるが、地/方を舞台に独自の余韻を感じさせる作品が多い。       (紀田)


 『儒海』は「杉村顕道の《発見》」464頁12行めにあるように、『現代怪奇小説集』3冊本刊行後の発刊なので、上下2巻本刊行に際しての加筆であろう。
 『怪談十五夜』に触れていないが、杉村氏から送られて来た略歴書に載っていなかったのであろう。「杉村顕道の《発見》」には、464頁2~9行め、

『現代怪奇小説集』は前述の通り一九七四年に刊行されたが、好評で版を重ね、その後も改装新版が/出ている双葉社からの姉妹篇『現代怪談傑作集』(一九八一)には、「白鷺の東庵」を収録)。私は初版刊行後、/またもや古書展で『箱根から来た男』の先行作品『怪談十五夜(一九四六)を掘り出した。一読して/みると、『十五夜』は『箱根』収録の主要作品と同一主題のものが多く、一種の異稿もしくは第一稿/という位置づけにある。その上最近知ったことだが、『十五夜』には重版が存在し、収録作品自体の/増補や削除が行われているということだ(第三版所持の北原尚彦氏のご教示による)。ということは、顕道/はいったん活字にした自作をふだんに手の中で紡ぐように磨き上げ、納得のいく決定稿をめざしてい/たのであろう。道理で語り口が暢達である。


 同様の指摘は9月9日付(112)に見たように北原尚彦によってなされているが、紀田氏が『怪談十五夜』と『箱根から来た男』の関係について「杉村顕道の《発見》」まで書いていなかったとしたら、北原氏が東京創元社「編集部経由で」得た「『怪談十五夜』を増補したのが『箱根から来た男』である」という情報は、何処から流れて来たのであろうか。(以下続稿)