瑣事加減

2019年1月27日ダイアリーから移行。過去記事に文字化けがあります(徐々に修正中)。

「足要りますか?」(5)

・永山一郎「配達人No.7に関する日記」(5)
 一昨日からの続きで小説の筋をやや詳しく見ている。所謂ネタバレと云う奴だが当ブログは面白そうな小説を紹介することを目的としていない。書いてある内容の確認と、どう読解すべきかに興味があるので、わざと匂わせたりしていない。いや、匂わせるような書き方をしたところもあるが、それは書くのが面倒になったか、書いてしまうのが味気なくなったか、そんな理由で書かなかっただけなのである。

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 16日め(104頁下段5行め~108頁上段10行め)、20日分の日記のうち最も長いが、その殆ど(105頁下段4行め~108頁上段6行め)は、執行委員長の遠藤に借りた「××年度執行委員会議事録」から引用した「××回執行委員会」の議事録の引用である。「出席者」は「遠藤達男執行委員長」そして4人の執行委員、1人めが「栗田甚四郎執行委員」で2人め立川、3人め花田、4人めは「五十嵐順一執行委員」.遠藤が主人公に紹介しなかった五十嵐は発言していないが、末尾(108頁上段5~6行め)に下寄せで「――終了時刻五時四十分―― /速記担当 五十嵐順一㊞  」とある。「議  題」は「一、配達人No.7について(提案栗田委員)/一、その他」で、その他は108頁上段3行め、(意見なし)で済んでいるから殆どが主人公が依頼した議案に費やされたことになるのだが、議事録の筆写の前に、105頁上段17行め~下段3行め、

 今、 “××年度執行委員会議事録” を読み終った。私/の知りたい分の他の頁はホッチキスでとじてあったが、/その理由も、執行委員達の妙な態度の原因も全てははっ/きりした。
 私はこの議事録を写しておかなければならない。私の【上】問題が、私と全く無縁な場でこね廻され、そのこね廻し/方の驚くべき巧妙さと無意味さに、一種の感動すら覚え/た記念として。

と断っているように、議論は提案者の栗田がそれなりに誠実に対応しようとするのを何のかのと批判した挙句「沖田よりも、沖田の背後に存在する敵の目的が重要なのだ」と云う展開になり、結局「傍観することだね。これ以上沖田のことに深入りしないこと」という結論に至る(引用した発言はともに遠藤のもの)。
 そこでようやく、108頁上段7~10行め、

 やはり私は上司に相談すべきであった。 "君は怠慢の/結果を知ってるね" もう遅いかも知れないが、月末まで/はあと三日ある。何とかなるかも知れない。
 請求カードは十六枚になった。

と云うことになる。
 17日め(108頁上段11行め~下段14行め)、上司に相談すると、自分を無視して組合に相談したことに不快感を表明しつつも、108頁下段3~8行め、

「よし、それじゃあ、こうしよう、来月つまり四日後に/なってもまだ君がその配達人No.7とかいう変な男とつき/合っているようだったら、私としてもきっぱりと処置す/る。能率、能率、能率だからね、それからね、それから/君がその男と手を切ったら今まで通り働いてもらう、い/いかね」

との条件を出す。
 そこで配達人No.7と話をしたいと思うが、電車の発車まぎわに外からカードを渡して来たので何も話せない。車窓から見下ろした禿頭が艶を失っているように見えたことに「かれも疲れていたのだろうか」と思いやる余裕が復活している。(以下続稿)