瑣事加減

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芥川龍之介旧居跡(14)

・群像 日本の作家 11『芥川龍之介一九九一年四月十日 初版第一刷発行・定価1748円・小学館・351頁・四六判上製本

芥川龍之介 (群像 日本の作家)

芥川龍之介 (群像 日本の作家)

 奥付の前(351頁の裏)の目録によると全23巻、生年順では「2森 鴎外」から「23大江健三郎」までの、近現代の作家について、作家の人物像や作品の批評を数多く再録、作品の舞台や生活した土地は新たに取材、最後に「代表作ガイド」や「年譜」等を附したもののようである。平成2年(1990)から平成4年(1992)に掛けて続刊されており、大体生年順だが鴎外と「1夏目漱石」、それから同年生だか「3樋口一葉」と「4島崎藤村」は島崎氏の方が先の生れで、明治19年(1886)生の「7石川啄木」「8谷崎潤一郎」「10萩原朔太郎」が順に並ぶ中に「9志賀直哉」が挟まる。以後「15中原中也」までは生年順だが「16井伏鱒二」が「12宮澤賢治」と「13川端康成」の間に遡る。「18三島由紀夫」を挟んで同年生の「17太宰 治」と「19大岡昇平」は大岡氏の方が先の生れ、そして「21吉行淳之介」と「22遠藤周作」も遠藤氏の方が1年早い。番号順に刊行した訳ではないので、巻数を途中で増やしたので乱れた訳でもなさそうである。平成2年(1990)の時点で生存していたのは「20井上 靖」以下の4人で、現在では大江氏のみである。その後、平成8年(1996)から平成10年(1998)に掛けて7巻が追加されて全30巻になっている。追加分のうち生存しているのは「村上春樹」と「村上 龍」の2人。
 扉に続いて、カラー口絵「芥川龍之介文学アルバム」16頁(頁付なし)。10頁めには大きく、11月13日付(12)に触れた「上の坂」の写真を掲出する。奥のコンクリートの15段ほどは現在も変わらないらしいが登り口の自然石を並べた6段ほどは、今はコンクリート製になってしまったらしい。その5段めの上、少し広くなったところに、鼻と胸の白い黒猫がこちらを向いて身構えるようにしている。左上にキャプション、

田端(東京)の家への坂道(龍之介の住んだ家は今はない)。大正/8年4月、教師と作家の二重生活を止め、田端の家で作家専業/の生活に入る。昭和2年7月、書斎での自殺まで住んだ

とあって、左にフラワーマンションが僅かに写り込むが、正面は鬱蒼たる笹藪を主とした昔ながらの雑木林のように見え、少しでも当時の面影を存しているような写真を選んで掲出したらしい。
 右側の家の山茶花が咲き、そして木々が葉を落としているところからして、冬らしいが、これは190~198頁、槌田満文文学紀行/芥川の東京・湘南を歩く」の取材に際して撮影されたものであろう。白黒写真が5つ、初めの190頁右「龍之介生育の地・本所小泉町」は題と執筆者名が紛れて見づらくなっており、縦組みゴシック体のキャプションも図中の左下でやはり見づらい。以下の4つの写真はいづれも奇数頁の上段左にあって、キャプションは下に明朝体横組みで添えてある。191頁「東京・田端の旧居跡付近」、193頁「出生の地・跡地、後の建物が聖路加病院」、195頁「大川の流れ(東京・隅田川)」、197頁「横須賀線と「蜜柑」の碑(横須賀市・吉倉公園)」で、本文の末尾に「(新稿)」とある。197頁の公園の桜はやはり葉を落としており、191頁の「山吹の家」を行き止まりの路地の側から覗き込むようにして立つ帽子の男性、槌田氏もしくは同行の人物は、コートを羽織っているようだ。本書の刊行時期からして、平成2年(1990)から平成3年(1991)に掛けての冬、すなわち、1990年8月7日にこの辺りを歩いた Lyle Hiroshi Saxon から半年ほど後の状景のようである。(以下続稿)